第八百四十話 マリー・エドワーズはクレムへの返信を送信して、真珠に『しっぺ』の遊び方を説明する

「真珠。クレムからのメッセージだったよ」


「わうう!!」


真珠は大好きなクレムの名前を聞いて、喜んで尻尾を振る。

クレムは真珠を『高い高い』してくれたり、いっぱい遊んでくれるので、真珠はいつも、とても楽しい。

マリーは表示させたクレムのメッセージを読み始める。



マリー。メッセージ読んだよ。奢りの約束、覚えててくれてサンキュ。

ゴチになりますっ。今、錬金塔の作業室にいるんだけど、どこに行けばいい?



クレムからのメッセージを読み終えたマリーは、真珠に視線を向けて口を開いた。


「真珠。今、クレム、錬金塔の作業室にいるんだって。教会に死に戻って待ち合わせするか、私と真珠が錬金塔に行って会うか、クレムに聞いてみるね」


「わんっ」


真珠はマリーの言葉に肯いた。

クレムと会える!! クレムと遊べる!! と思いながら、真珠はわくわくして尻尾を振る。

マリーはクレムへの返信を書き始めた。



クレム。メッセージをありがとう。

私と真珠は今、死に戻って教会にいるんだけど、教会で待ってればいいか、それとも錬金塔に行けばいいか教えて。

返事、待ってます。



マリーは、クレムへの返信を書き終えて送信した。


「メッセージ、送信完了っ。真珠、クレムから返信があるまで、ここで待ってようね」


「わんっ」


微笑んで言うマリーに、真珠は肯く。

クレムからの返事、早く来ないかなあ。


「待ってる間、ちょっと暇だね。あっ、そうだ。私、真珠と一緒にできる遊びを思いついたよっ」


マリーの中の人の悠里が、幼稚園生から小学校低学年の時まで、幼なじみの晴菜や圭と一緒によく遊んでいたシンプルな遊びだ。

遊びの名前は知らないけど、圭が『しっぺ』と読んでいたから、悠里もそう呼んでいた。

『しっぺ』の意味は知らない。


「あのね、真珠。今から教えるのは『しっぺ』っていう遊びだよ」


マリーは真珠を見つめて説明を始めた。

真珠は真剣な顔で、肯きながらマリーの説明を聞く。

マリーは自分の両手を使って『しっぺ』の遊び方を説明する。


「私の右手が私の手で、私の左手が真珠の足っていう感じで見ててね」


「わんっ」


真珠はマリーに言われた通り、マリーの両手を凝視する。

マリーは自分の右手を下に、左手を上にして宙に重ねた。


「こういう風にね、二人以上の人の手……と、足を重ねるのね。それでね、一番下の人がね、素早く自分の上に手を重ねた人の手を叩くの」


マリーは下にしている右手を素早く引き抜き、上にしている左手を叩いた。


「ぎゃわんっ」


真珠は、真珠の足を叩かれたような気がしてびっくりした。


「それでね、上に重ねてる手の人は叩かれないように素早く手を引っ込めるの」


マリーはもう一度、自分の両手を上下に重ねて、下にした右手を引き抜く。

だが、今度は左手を叩く前に、左を引っ込めた。

真珠は、真珠の足に見立てた左手が叩かれなくてほっとする。

『アルカディアオンライン』は痛覚設定が0パーセントなので、叩いても叩かれても痛くないので、安心して『しっぺ』で遊べる。


「真珠。『しっぺ』の遊び方、わかった?」


「わんっ」


真珠はマリーに力強く肯いた。


「じゃあ、遊んでみようか。真珠は上と下、どっちがいい? 上にする?」


真珠はマリーの言葉に、首を横に振る。

真珠は下がいい!! 素早く足を引き抜いて、マリーの手を叩くのだ!!


「真珠は下がいいんだね」


「わんっ」


真珠はマリーの言葉に張り切って肯いた。


***


光月14日 昼(3時26分)=5月29日 19:26


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