第八百三十七話 マリー・エドワーズと真珠は教会から錬金術師ギルドまで、走る
気がつくと、マリーは教会にいた。真珠も一緒だ。
マリーは真珠と視線を合わせて微笑み、口を開く。
「真珠。錬金術師ギルドに行こうっ」
「わんっ。わんわぅ、わんっ」
真珠はマリーに肯き、走り出す。
真珠は教会から錬金術師ギルドまでの道を、ちゃんと覚えている!!
真珠がマリーを錬金術師ギルドに連れていく!!
「真珠、待って……っ!!」
マリーは、張り切って錬金術師に向かって走り出す真珠を追いかける。
教会を飛び出した真珠は、一路、錬金術師ギルドを目指して走る。
マリーは必死に真珠を追いかけた。
マリーはAGIを50上げることができる『疾風のブーツ』を履いているので、なんとか、真珠の姿を見失わずに済んでいる。
プレイヤーたちは、走る白い子犬とそれを追いかける幼女を微笑ましく見つめたり、迷惑そうに眉をひそめたりしている。
真珠の暴走で、マリーのプレイヤー善行値は若干減った。だが、プレイヤーレベルが下がるほどには減っていないのは幸いだ。
真珠は走って走って、走り抜き、錬金術師ギルド前に到着した。
真珠はちゃんと、教会から錬金術師ギルドまでの道を覚えていた!!
マリーを案内できたことが嬉しくて、真珠は誇らしい気持ちで後ろを振り返る。
マリーがいない!!
「わうーっ!?」
真珠はマリーがいないことにびっくりして叫び、それから、耳をピンと立て、マリーの声と匂いを探した。
「しんじゅー」
遠くから、マリーの声が聞こえる。
「わうーっ!!」
真珠の目は、豆粒のようなマリーの姿を捉えた!!
真珠はマリーに向かって走り出す。
「もう無理。走れない……」
走り通す真珠を必死に追いかけてきたマリーだったが、もう限界だった。
きっと、ステータス画面には『状態異常 疲労』という表示があるだろう。
教会に死に戻って、ステータス異常をすっきりと直したい衝動に駆られるけれど、そうしたら、ここまで頑張って走ってきた意味がなくなる……。
「わうーっ!!」
錬金術師ギルド前にたどり着いていた真珠が、疲れてふらふらしながら歩くマリーのところに走って戻ってきた。
「しんじゅ……。足、速いね……」
「わうー。きゅうん」
「私……ちょっとつかれちゃって……でも、錬金術師ギルド、もう見えてるから頑張ってあるく……」
マリーはよろよろと歩き、真珠は心配そうにマリーに付き添いながら歩く。
そしてマリーと真珠は錬金術師ギルド前にたどり着いた。
「ついた……」
「わんわんっ」
「でも今思ったけど、錬金するなら、錬金塔に行かなきゃだよね……」
「きゅうん……」
マリーと真珠は錬金塔まであと少し、歩かなければならないようだ。
***
光月14日 昼(3時05分)=5月29日 19:05
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