第八百三十六話 マリー・エドワーズと真珠は『エリア・インビジブル』スキルで姿を消し、バージルと鬼ごっこをしながら教会に死に戻る

マリーは教会に死に戻るために『エリア・インビジブル』を使うことを思いつく。

マリーと真珠の姿が突然消えたら、きっとバージルはびっくりすると思う……!!


「真珠、ちょっと耳貸して」


「くぅん?」


マリーに呼ばれた真珠は首を傾げてマリーを見つめる。

真珠は『みみかして』という言葉の意味がわからない……。

マリーは真珠の前で身を屈め、小さな声で言う。


「今からね、私と真珠が『エリア・インビジブル』で姿が見えなくなったら、バージルさんがびっくりすると思うの。バージルさんを驚かせちゃおうねっ」


真珠はバージルのびっくりした顔が見たい!!

真珠は無言で何度も肯いた。面白そうだ。

マリーの小さな声は、バージルにもしっかり聞こえていた。だがバージルの中の人は大学生で、お酒も飲める大人なので、マリーの言葉が聞こえないふりをする。


バージルは『インビジブル』スキルのことも知っていた。

『インビジブル』スキルはスキル発動中、プレイヤーの身体を見えなくする魔法スキルだ。

バージルの中の人の男友達が『インビジブル』スキルを使って『アルカディアオンライン』の女湯を覗きに行き、デメリットスキル『覗き魔』を取得したのも知っている。

バージルはスキルポイントが足りずに『インビジブル』スキルを取得できなかったことを、今はよかったと思っている。

デメリットスキル『覗き魔』を取得していたら、最愛の妻、リリアは結婚してくれなかったかもしれない。


マリーは『エリア・インビジブル』スキルを自分と真珠に発動させた。

マリーと真珠の姿が消える。

バージルは大人としての対応をするべく、驚いた顔を作って口を開いた。


「死に戻ったわけでもないのに、マリーと真珠がいなくなった!? どこに行ったんだ!?」


バージルのセリフは若干棒読みだった。

バージルの中の人は、演技経験の無い男子大学生なのだから仕方がない。


姿を消したマリーと真珠は驚いた様子のバージルの顔を見て、自分たちのいたずらが成功したと思って大喜びした。


「バージルさん、こちらっ。手の鳴る方へっ」


マリーはそう言いながら手拍子をする。


「わーわう、わんわんっ。わんわぅ、わんわんっ」


真珠はそう吠えて、右足で足踏みをした。

空気を読んだバージルは、姿を消したマリーと真珠が『鬼ごっこ』をしたがっていると察して口を開く。


「マリーと真珠の声が聞こえるぞっ。二人とも、どこだ……っ!?」


バージルのセリフは、相変わらず、若干棒読みだった。

だがマリーと真珠は大喜びで逃げ回る。

マリーも真珠もお互いの姿が見えないのだが、真珠はマリーの匂いを察知して、ぶつからないように走っている。


バージルはマリーの手拍子や足音を頼りに、マリーと真珠を捕まえようと部屋の中をうろうろした。

そのうちに、マリーが魔力枯渇状態になり、マリーと真珠は教会に死に戻る。

足音が聞こえなくなった部屋に一人佇み、バージルはため息を吐いた。


「子どもの相手ってのは、大変なんだな……」


マリーの中の人は中学一年生なのだが、バージルはそのことを知らない。



***


マリー・エドワーズのスキル経験値が上昇


エリア・インビジブル レベル1(30/100)→ エリア・インビジブル レベル1(50/100)


マリー・エドワーズの最大MP値が上昇


MP 65/65 → MP 0/66

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