第八百三十四話 マリー・エドワーズは『日替わりおまかせ定食』三人分の代金として銅貨24枚を支払った直後に強制ログアウトする
マリーがバージルに『日替わりおまかせ定食』三人分の代金として銅貨24枚を支払った直後、サポートAIの声が響く。
「プレイヤーの身体に強い揺れを感知しました。強制ログアウトを実行します」
その言葉を聞いた直後、マリーの意識は暗転した。
悠里が目を開けると、祖父の顔が目の前にあった。
「悠里、起きたか。親子丼ができたぞ」
「私、今『アルカディアオンライン』で定食を食べた直後なんだよ。今、お店の中で寝ると迷惑が掛かっちゃうから、もう一回ゲームに戻っていい?」
「悠里はお母さんに怒られてもいいのか? 俺はお母さんに『なんで悠里が来ないのか』って聞かれたら正直に『ゲームをしてる』と答えるぞ」
「今すぐに、晩ご飯を食べに行きます……」
悠里は母親に怒られるのが怖くて折れた。
母親は怒ると悠里の『アルカディアオンライン』のゲーム機器が取り上げられ、封印されてしまうので、母親の機嫌を損ねるのはおそろしい。
それに、お腹が空いている……。
ファンタジーVRMMO『アルカディアオンライン』でおいしいご飯やスイーツを食べたとしても、リアルの悠里のお腹は満たされない。
悠里は横たわっていたベッドから起き上がり、ヘッドギアを外して電源を切る。
それからゲーム機の電源を切った。
ヘッドギアとゲームをつなぐコードはそのままにしておく。
母親を待たせ過ぎると『アルカディアオンライン』をぐずぐずとプレイしていたと思われてしまう。
悠里は早足で二階の自室を出て、小走りで階段を駆け下りた。
ダイニングに駆け込むと、たぶん怒られるので、静かに歩いてダイニングに足を踏み入れる。
ダイニングには悠里以外の家族が全員揃っていた。
悠里の席には親子丼と味噌汁、キムチ等が並べられている。
悠里は椅子に座って口を開いた。
「いただきますっ」
そして『アルカディアオンライン』を一秒でも早くプレイするために、親子丼を山盛り口の中に突っ込む。
「悠里。落ち着いて食べなさい」
悠里の食べ方を見た祖母が心配そうに言うので、悠里はもぐもぐと口を動かしながら、二度、肯いた。
のんびり食べていたら『アルカディアオンライン』へのログインが遅くなり、バージルの店に迷惑をかける時間が長くなってしまう。
ログアウトして寝てしまったマリーと真珠を、店の隅に置いてくれているといいのだけれど。
まさか、店の外に放り出されてはいないはず……。
悠里は高速で、もぐもぐしながら、無言で親子丼を食べ続ける。
祖父や父親が『アルカディアオンライン』の話をしているが、今、悠里に話を聞く余裕はない。
必死に食事を終えた悠里は自分が使った食器を、キッチンで素早く洗い、そして二階の自室に向かう。
とにかく、早く『アルカディアオンライン』にログインして、迷惑にならないところに移動したい。
二階の自室に戻った悠里は、ベッドに放り投げていたゲーム機とヘッドギアの電源を入れてヘッドギアをつけた。
ベッドに横になり、目を閉じる。
「『アルカディアオンライン』を開始します」
サポートAIの声がした直後、悠里の意識は暗転した。
***
『日替わりおまかせ定食』銅貨8枚×3 銅貨24枚 ※マリーと真珠、アーシャの分。真珠のスープのお代わりはバージルの奢り
マリー・エドワーズの現在の所持金 3684001リズ → 3681601リズ
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