第八百三十三話 マリー・エドワーズは真珠に『アサリの殻は食べられない』ことを教える
平皿のスープに顔を突っ込んだ真珠は、アサリを殻ごと三つ口の中に入れた。
そして真珠は、口の中に入れたアサリを殻ごと噛んだ!!
噛んだ瞬間にものすごく不快な感触があり、真珠は噛み砕いたアサリの殻を平皿にぺっと吐き出して泣き出した。
「ぎゃわあああああああああああああああああああああああああああああんっ!!」
「真珠、どうしたのっ!?」
真珠の泣き声に驚いて、マリーは真珠に視線を向ける。
「わうー!! ぎゃわあああああああああああああああああああああああああああああんっ!!」
真珠は泣きながらマリーに飛びつく。
口の中でガリっといった!! 真珠はすごく気持ちが悪い!!
バージルは、真珠が噛み砕いて平皿に吐き出したアサリの残骸を見つける。
「真珠はアサリを殻ごと食っちまったのか。そりゃあ、びっくりしただろうなあ」
「そうなの? 真珠。ごめんね。真珠はアサリの殻を食べずに、身だけ食べるって知らなかったんだね。ごめんね。私がアサリの身を取ってあげればよかった」
マリーは泣き続ける真珠の頭や身体を撫でて、慰める。
アーシャは真珠を心配そうに見つつ、定食を食べる手を止めない。
「うう、ひっく、ひっく、きゅうん……」
マリーに慰めてもらった真珠は、少し落ち着きを取り戻した。
バージルは、真珠が噛み砕いて吐き出したアサリの残骸が入った平皿を手にして口を開いた。
「テイムモンスターの真珠にアサリのスープを出したこっちも悪かったよ。アサリのスープだけ、お代わりで持ってきてやる。お代わりの分の代金はいらないからな」
「ありがとうございます。バージルさん。よろしくお願いします」
「わーわう……。わわんわわう……」
真珠はアサリの残骸を、平皿に吐き出したことをバージルに謝った。
バージルは平皿を持っていない方の手で真珠の頭を撫で、台所に向かう。
マリーは膝の上で真珠をあやしながら、自分のスープに入っているアサリから身を取り出した。
白くぷっくりとしたアサリの身をフォークの上に乗せ、マリーは真珠にアサリの身を見せた。
「真珠。アサリはねえ、こうやって硬い殻から身を取って食べるんだよ。殻は食べられないの」
「きゅうん。わん……」
真珠はマリーの言葉に肯く。
アサリの殻は食べられない。真珠は覚えた。
「真珠。アサリの身を食べてみる? おいしいよ」
「きゅうん……。わん」
真珠はマリーの言葉に肯き、勇気を出して口を開けた。
マリーは真珠の口にアサリの身を入れる。
真珠はアサリの身を身をもぐもぐと噛んで、飲み込んだ。おいしい。
アサリの身のおいしさを知った真珠は元気を取り戻し、バージルが持ってきてくれたお代わりのアサリのスープを舐め始める。
マリーは元気になった真珠を見て微笑み、定食を食べ始めた。
そして、マリーと真珠、アーシャはそれぞれにおいしく定食を食べ終えた。
***
光月14日 早朝(1時59分)=5月29日 17:59
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