第八百三十話 マリー・エドワーズと真珠、アーシャは港に着き『白い粉』の話をする

マリーと真珠を抱っこしたアーシャはお喋りをしながら歩き、そして港に到着した。

真珠は、教会から港までの道のりをしっかりと覚えた……!!


早朝の港は、小舟を操り漁に出かけたり、漁から戻る小舟があったりして賑わっている。

マリーは潮の香りを吸い込み、真珠は波の音に耳を傾けた。

アーシャはずっと抱っこしていた真珠を地面に下ろして、伸びをする。


「ゲームの中だけど、海はいいね。ウチ、マリーちゃんや真珠くんと、ここに来れてよかったよ」


「こちらこそ、港に連れてきてもらってありがとうございますっ」


「わーわぅ、わううわうっ」


「どういたしまして。マリーちゃんと真珠くんは海で遊ぶの?」


「私はツボに海水を汲みたいと思ってますっ。錬金に使いたいので」


「そうなんだ。塩とか作るの?」


「アーシャさんっ。それを言ったらダメですっ」


マリーはアーシャに『港町アヴィラが所属する『リューンライト王国』では塩の密造、密造した塩を販売した者はいずれも死刑』になると説明した。


「そうなんだ。ウチらはプレイヤーだから死に戻りできるけど、錬金武器の『聖人殺しの短剣』で死刑執行されちゃうと、強制的に転生になっちゃうからヤバいよね」


マリーの説明を聞いたアーシャが言う。

真珠は潮風に吹かれて目を細めている。

マリーはアーシャを見つめて口を開いた。


「だから私は例のものを『白い粉』って言ってるんです。今、王都に行っているユリエル様が戻ったら『白い粉』の流通についての話も聞けるんじゃないかと思ってますっ」


「『白い粉』って言い方、危険薬物みたいで怖いね。『アルカディアオンライン』は全年齢対象のゲームだし、未成年プレイヤーはお酒で酔えない仕様になってるみたいだから、危険薬物とかそういうのは無い気がするけど」


マリーは、アーシャとの会話が一段落したので、アイテムボックスから素焼きのツボを取り出した。


「アーシャさん。私、海水を汲みますね」


「じゃあ、マリーちゃんが海に落っこちないようにウチが支えててあげる」


「ありがとうございますっ」


マリーは小舟が停泊している隙間に身を乗り出して、ツボに海水を汲んだ。

アーシャが支えてくれるので、バランスを崩すことも海に落ちることもなかった。よかった。

マリーは身体を支えてくれたアーシャにお礼を言って、海水を汲んだツボをアイテムボックスにしまった。


「わうー、わーわぅ、わんわんっ」


おいしい匂いを嗅ぎ取った真珠が、マリーとアーシャを振り返りながら歩き出す。

真珠は、香ばしい、おいしい匂いが気になる……!!


「真珠、どうしたの? どこ行くの?」


「真珠くんは行きたいところがあるみたいだね。マリーちゃん、真珠くんについていこうよ。面白そう」


アーシャが振り返りながら歩く真珠を追って歩き出す。

マリーも真珠とアーシャに続いた。


***


光月14日 早朝(1時28分)=5月29日 17:28

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