第八百二十六話 マリー・エドワーズは机の上に書置きを残し、真珠と一緒に教会に死に戻る

マリーが目を開けると、部屋の中は暗かった。

父親のいびきの音がうるさい。

今のゲーム内の時間帯は『真夜中』だろうか。


「わうわぅ、わうー」


目覚めた真珠がマリーにすり寄って言う。


「おはよう、真珠」


マリーは真珠の頭を撫でて微笑み、口を開く。


「ステータス」


マリーは自分だけが見られるステータス画面を出現させて、ステータス画面の光で部屋の中を見渡した。

父親の隣に母親も寝ているようだ。

マリーは『リープ』前に着ていたワンピースではなく、寝巻を着ている。

母親か祖母が、マリーを着替えさせてくれたのだろう。


「真珠。私、着替えるからちょっと待っててね」


マリーが両親を起こさないように小声で言うと、真珠は無言で二度肯いた。

マリーは寝巻を脱ぎ、丸襟のブラウスにキュロットスカートを履く。

それからアイテムボックスから『疾風のブーツ』を取り出して、履いた。

脱いだ寝巻を畳んでベッドの上に置き、この前書き途中だった書置きに『出かけてきます』と書き添えて机の上に置く。

書置きは『し』の文字が大きい『しんじゅ』と小さな文字の『出かけてきます』で構成されている、雑なものだが、マリーは満足した。


「真珠。今から教会に死に戻るよ」


書置きを机の上に置いたマリーはベッドの上でお座りをしている真珠の元に戻ってきて言う。

真珠は無言で肯いた。

マリーは脱いだ寝巻に『クリーン』をかけまくって魔力枯渇状態になり、真珠と一緒に教会に死に戻った。


気がつくと、マリーは教会にいた。真珠も一緒だ。

夜に、子どもと子犬だけで外出したことを、母親や祖母は怒るかもしれないけれど、でも書置きを残してきたので大丈夫だ。

この前はいい子で家にいたから、今日は外で遊ぶのだ。


「真珠。とりあえずフローラ・カフェに行こうか」


マリーはそう言って真珠に視線を向けた。

フレンドのクレムにスイーツを奢る約束を果たせないままになっていることが心に引っかかっている。

フローラ・カフェで買ったスイーツをアイテムボックスに収納しておけば、クレムに会った時にスイーツを渡すことができると思う。


「わんわぅ、わんっ!!」


甘い物とおいしい物が大好きな真珠は、フローラ・カフェに行けると知って、尻尾を振って大喜びしている。

マリーと真珠は教会内にあるフローラ・カフェ港町アヴィラ支店に向かった。



***


マリー・エドワーズのスキル経験値が上昇


クリーン レベル2(50/200)→クリーン レベル2(60/200)


マリー・エドワーズの最大MP値が上昇


MP 64/64 → MP 0/65


光月14日 真夜中(6時48分)=5月29日 16:48

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