アルカディアオンライン【高橋悠里 中学一年生・一学期終了編】
第七百八十三話 マリー・エドワーズは『リープ』して高橋悠里は転送の間で『ハーレムの指輪』について聞いた後、ユリエルにメッセ―ジを送ってログアウトする
第七百八十三話 マリー・エドワーズは『リープ』して高橋悠里は転送の間で『ハーレムの指輪』について聞いた後、ユリエルにメッセ―ジを送ってログアウトする
真珠を抱っこしたマリーはユリエルと別れ、世話係のナナに先導されて、領主館でいつも使わせてもらっている部屋に入った。
真珠はマリーの腕の中から飛び下りてベッドに駆けて行き、軽やかにベッドの上に乗った。
マリーは部屋に案内してくれたナナを見上げて口を開く。
「ナナさん。私と真珠、これからちょっと寝るので、ふたりだけにしてもらって大丈夫です。すぐに起きるかもしれないので、服装はこのままで放っておいてください」
「わかりました。あの、さっきはすみませんでした。私、マリーさんや真珠さんと遊ぶのが楽しくて、仕事を放り出してしまって……」
ナナが申し訳なさそうな顔をして頭を下げる。
マリーは、ナナが謝ったのがスリッパのことではなかったのが少し意外だったけれど、首を横に振った。
「私も真珠もナナさんと遊べて楽しかったです。また遊びましょうね」
マリーがそう言うと、ナナは嬉しそうに笑いかけ、それから表情を引き締めた。
「いいえ、そういうわけにはいきません。侍女長に怒られてしまいます……」
「グラディス様に内緒で遊べば大丈夫ですっ。たぶんっ」
マリーはそう言って、真珠が待つベッドに向かう。
ふわふわで履き心地が良いスリッパを脱いでベッドに上がり、横になった。
「真珠、ちょっと寝ようね」
「わんっ」
マリーは真珠に微笑み、彼の頭を撫でて口を開いた。
「リープ」
マリーの意識は暗転した。
気がつくと、悠里は転送の間にいた。
無事に『リープ』できたようだ。
悠里はマリーが着ていたオレンジ色のワンピースドレスを着ているようだ。
ゲームの中ですごく気に入った服を着ることもあるんだなあと思う。
「プレイヤーNO178549。高橋悠里様。『アルカディアオンライン』のアップデート情報があります。お伝えしても宜しいですか?」
目を開けた直後に聞こえたサポートAIの言葉に、悠里は首を傾げて口を開く。
「それって『ハーレムの指輪』のことですか?」
「左様です。『アルカディアオンライン』のアップデート情報をお伝えしても宜しいですか?」
「よろしいですっ。お願いします」
「『アルカディアオンライン』のアップデート情報をお伝えします。『最愛の指輪』と『ハーレムの指輪』を交換可能になりました。『ハーレムの指輪』を得るためには、『ハーレムの指輪』一つにつき、リアルマネー1万円かゲーム内通貨10万リズが必要になります。対価を用意できれば『ハーレムの指輪』は10個まで購入可能です」
「『最愛の指輪』と『ハーレムの指輪』はどう違うの?」
「効能は同じです。プレイヤーから指輪を贈られたNPCはそのプレイヤーへの友好度が最高値で固定され、下がることはありません。但し『ハーレムの指輪』のデザインは一種類で変更不可です。さらに一部の『アルカディアオンライン』ゲーム制作スタッフの強い要望により『真実の愛』クエストが実装されました。ハーレム要員にされてしまったNPCを救いたいと強く願い行動するプレイヤーが『真実の愛』クエストを受注し、達成できれば、該当NPCの指から『ハーレムの指輪』が消滅します」
「それだとハーレムを作ったプレイヤーが怒っちゃうんじゃない?」
「それを鑑みて『真実の愛』クエストは『ハーレム要員が5人以上』の場合に限り『ハーレムの中で一人だけに』発生させることができます。ハーレム自体は瓦解することなく存続します」
「そうなんだ……。『ハーレムの指輪』のデザインってどんなのですか?」
「『ハーレムの指輪』のグラフィックを表示させます」
サポートAIがそう言った直後に悠里の目の前に、髑髏のモチーフのゴツい指輪のグラフィックが現れた。
「ダサ……っ」
中二病全開のデザインを見た悠里は思わず呟く。
圭はすごく好きそうな指輪だ。
「『ハーレムの指輪』の必要を強く主張したグラフィック担当の渾身のデザインです」
「そうなんだ……。ハーレムを憎んでる人がデザインした指輪かと思った……」
「『ハーレムの指輪』を入手した場合は『最愛の指輪』は消失します。『最愛の指輪』が欲しい場合は『転送の間』でワタシにお申し付けください。『ハーレムの指輪』を全て消失させて『最愛の指輪』に変換します。その場合『ハーレムの指輪』の対価は戻りませんのでご了承ください」
「ちなみに『ハーレムの指輪』を入手したプレイヤーっているの……?」
「現時点でプレイヤーが購入した『ハーレムの指輪』の個数は6521420個です」
「多い……っ。あれ? でも『アルカディアオンライン』のプレイ人数から考えると少ない……?」
「『ハーレムの指輪』のデザインを変えるか増やして欲しいという要望は10521020件入っているようです」
「そっかぁ……。素敵だと思うデザインって人それぞれだもんねえ」
「プレイヤーから一目見て『ハーレムだ』とわかるように一種類のデザインで統一することを決定しました」
「うん……。普通のプレイヤーは一人しか仲良くなれないのに、ハーレムプレイヤーは10人仲良くなれるから、それは一目見てわかった方がいいのかも……。あっ。今、リアルの時間って何時ですか?」
「5月27日22:15です」
「うわあ。もう夜の10時過ぎちゃったんだ。ゲームで遊んでると時間が溶けてなくなるよね……」
悠里は少し迷って、今日はもうゲームを終えることにした。
明日、今日のように眠すぎる一日を過ごすのはキツい……。
「今日はもうゲームをやめるってユリエル様にメッセ―ジを送ろう。ステータス」
ステータス画面を出現させた悠里はユリエルへのメッセ―ジを書き始めた。
♦
ユリエル様。もう夜の10時を過ぎてしまったみたいなので、私、ゲームをやめますね。
今日は一緒にご飯を食べられてすごく楽しかったです。ありがとうございました。
また明日、学校で会えるのを楽しみにしています。おやすみなさい。
♦
悠里はユリエルへのメッセ―ジを書き終えて送信した。
それから姿見の鑑でオレンジ色のワンピースドレスを着ている自分の姿を眺めてから『転送の間』からログアウトした。
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