第七百八十二話 マリー・エドワーズはイヴからのメッセージに記載された『ハーレムの指輪』というワードを見て混乱する

マリーは食事の手を止め、ステータス画面を出現させてフレンドからのメッセージを確認する。

真珠は冷製スープを舐め終えて、次の料理をおとなしく待っている。

マリーは表示されたフレンドからのメッセージを読んで眉をひそめた。


マリーの隣の席に座っているユリエルはマリーが眉をひそめていることに気づいて口を開いた。


「マリーちゃん、どうしたの?」


「今、フレンドのイヴさんからメッセージが来たんですけど……なんかよくわからなくて。ユリエル様は『ハーレムの指輪』って知ってますか?」


「えっ? 知らないけど……」


マリーは再度、目の前に表示されたイヴからのメッセージに目を通す。



マリー、聞いてよ!!

ウェインがあたしに『最愛の指輪』をくれないの!!

あたしたち付き合ってるのに……!!

ワールドクエスト達成のためにNPCのエルフと協力関係になりたいから『ハーレムの指輪』を使うって言うの!!

マリーからも、ウェインに、あたしに『最愛の指輪』をくれるように言ってね。お願い!!



……何度読んでも意味がわからない。

わからないことは聞いてみよう。

マリーはイヴへの返信を書き始めた。



イヴさん。『ハーレムの指輪』ってなんですか……?



マリーはそれだけを書いて送信した。

イヴからの返信が来るまでは食事を楽しもう。

マリーは運ばれてきた分厚いステーキと温野菜の付け合わせを見つめてそう思った。


マリーたちが食事を終え、真珠がマリーの膝の上に座り、和やかにお喋りをしていたその時、可愛らしいハープの音が鳴った。

フレンドからメッセージが来たようだ。


「すみません。フレンドからメッセージが来たので確認しますね。ステータス」


マリーはユリエルたちにそう言って、ステータス画面を出現させ、フレンドからのメッセージを確認する。

メッセージの送り主はイヴだ。

マリーはイヴからのメッセージを確認する。



『ハーレムの指輪』の説明、サポートAIから聞かなかった?



「聞いてないです……」


イヴのメッセージを読んだマリーは思わず言った。

マリーの言葉を聞いたユリエルが口を開く。


「マリーちゃん、イヴさんからのメッセージだった?」


「はい。『ハーレムの指輪』の説明、サポートAIさんから聞いてないのかって……」


「俺がログインした時には何も言ってなかったと思う。気になるね」


「気になります……」


聖人であるマリーとユリエルの会話はNPCたちには理解不能だ。

だが、ユリエルと過ごす時間が長い領主やレーン卿は慣れている。

ノーマも、聖人のマリーと友達付き合いをしているので、特に動じることはない。

側に控えている侍女長やナナも、口出しをすることはない。


マリーとユリエルはそれぞれ、ベッドのある部屋に戻り『転送の間』でサポートAIから話を聞くことにして、食堂を出た。

真珠はおとなしくマリーに抱っこされている。



***


光月7日 夜(5時50分)=5月27日 21:50


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