第七百八十一話 マリー・エドワーズは冷製スープを飲み、ユリエルから「王都に行こう」と誘われて戸惑う
ユリエルとマリーが席に着き、真珠がユリエルとマリーが席の間に座ると、新たに席に着いた人数分のスープが運ばれてきた。
マリーはスープを見て、それから真珠に視線を向け、口を開く。
「真珠。スープ熱いかもしれないから気をつけてね」
「くぅん?」
真珠はマリーの言葉に首を傾げる。
鼻を近づけてみても、熱くない……?
「マリーちゃん。冷製スープだから熱くないよ」
マリーの隣に座っているユリエルがスープを一口食べた後に彼女に伝える。
「スープ、冷たいんですね。教えてくれてありがとうございます」
マリーはユリエルに微笑んでお礼を言い、真珠に視線を向けて口を開いた。
「真珠。スープ熱くないって。飲んでも大丈夫だよ」
「わんっ」
真珠はマリーに肯き、平皿に入ったスープを舐め始めた。
冷たくておいしい……!!
マリーは真珠が尻尾を振りながら嬉しそうにスープを舐めている姿を見てほっこりした後、自分のスプーンを持ち、スープを飲み始める。
トマトの冷製スープだろうか。おいしい。
ユリエルの正面に座っている港町アヴィラの領主は、分厚いステーキを食べ終え、おいしそうに冷製スープを飲む息子を嬉しそうに見つめた。
港町アヴィラの領主の隣に座っているフレデリック・レーンが優雅にステーキを切り分けながら口を開く。
「ヴィクター様。ユリエルに、王都に出向くことはもう伝えたのですか?」
「いや、まだ話していない」
「お父様。王都へ行かれるのですか?」
ユリエルは父親の顔を見て問いかけた。
ヴィクターはユリエルと視線を合わせて肯き、口を開く。
「前教皇のクラーク・エイベルが死去して、女神の選定を受けた新しい教皇が擁立されたことは知っているか? それを受けて、光月15日から王都で『祝祭』が行われると知らせの鳥が来たのでな。新教皇の人となりを確かめるためにも『祝祭』に参加することにした」
父親の話を聞いたユリエルの好奇心が疼き、彼は父親に視線を向けて口を開いた。
「俺は王都に行ったことがないので、行ってみたいです」
「一緒に行くか? ユリエル」
ヴィクターに誘われたユリエルは笑顔で肯く。
マリーがユリエルが王都に行っている間、一緒に遊べないのかと寂しくなったその時、ユリエルはマリーに視線を向けて口を開いた。
「マリーちゃんと真珠くんも一緒に王都に行こうよ」
「えっ!? でも……」
「いいですよね? お父様」
ユリエルは自分に甘い父親は、押せば肯くと確信している。
真珠はテーブル越しの会話を全く聞かず、ひたすらに冷製スープを舐め続けている。
「お嬢さんの同意と、お嬢さんのご両親の許可を得るのが先だよ。ユリエル。まずは食事を楽しみなさい」
父親に諫められたユリエルは神妙に肯き、マリーは突然降ってわいた王都行きの話に戸惑う。
ファンタジーVRMMO『アルカディアオンライン』のプレイヤーとしては王都に行ってみたいけど……。
マリーが迷いながらスープを口にしたその時、可愛らしいハープの音が鳴った。
フレンドからメッセージが来たようだ。
***
光月7日 夜(5時27分)=5月27日 21:27
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