第七百七十九話 マリー・エドワーズはスロットマシーン等を収納して、真珠を抱っこしたユリエルと食堂に向かう
真珠はいつも通りにスロットの『王冠』を三つ揃えることに成功し、ナナに尊敬されて、得意満面で尻尾を振った。
そして初めて、この場にユリエルが来ていることに気づく。
「わうわう!!」
「真珠くん。相変わらずスロットが上手だね」
「わんわんっ」
ユリエルはそう言って丸椅子に座っている真珠の頭を撫でた。
真珠は大好きなユリエルに頭を撫でてもらって嬉しくて青い目を細め、尻尾を振る。
侍女のナナは領主子息のユリエルの訪問に動転している。
「ユリエル様っ。あの、その、マリーさんと真珠さんに何か御用でしょうか……っ」
マリーや真珠と遊んでいたことをとがめられるかもしれないと怯えながら、ナナはユリエルに問いかけた。
「晩ご飯を一緒に食べようと思って誘いに来たんだ」
「わうう!!」
真珠は領主館のおいしいご飯を食べられると思っていち早く反応した。
「私と真珠も一緒でいいんですか?」
ゲーム内時間が夜だから晩ご飯を食べるのであれば、もしかしたら、NPCで港町アヴィラの領主であるユリエルの父親も同席するかもしれない。
不安げに問いかけるマリーにユリエルは微笑んで肯き、口を開く。
「うん。フレデリックお兄様とノーマさんも、マリーちゃんと真珠くんが一緒だと嬉しいと思う」
「わーう?」
「そう。ノーマさんも一緒だよ」
ユリエルはそう言って丸椅子に座っている真珠を抱き上げた。
マリーはユリエルの言葉を聞いて、少し緊張が和らいだ。
「じゃあ私、スロットマシーンと丸椅子を片づけますね。ステータス」
マリーはステータスを出現させて、収納していた皮袋をアイテムボックスから取り出し、コイン受け取り口に流れ出たヘヴンズコインを皮袋にぎゅうぎゅうに詰めて、スロットマシーンの背面に回って少し窪んだ取っ手に手を掛けて、コイン補充口の蓋を開けた。
そして皮袋に入ったヘヴンズコインをコイン補充口に入れ、コイン補充口の蓋を閉めた。
それから、空になった皮袋とスロットマシーン、丸椅子を左腕の腕輪に触れさせて、アイテムボックスに収納する。
「お待たせしましたっ。準備完了ですっ」
スロットマシーンと丸椅子を収納し終えたマリーは、真珠を抱っこしたユリエルに笑顔を向けて敬礼する。
「お疲れさま、マリーちゃん。じゃあ行こうか」
「はいっ」
「わんっ」
真珠を抱っこしたユリエルに促され、マリーは肯いた。
ユリエルの腕の中で真珠も肯く。
「あっ。マリーさん、リボンは……っ」
ナナの声は小さくて、マリーの耳には届かなかった。
マリーと真珠を抱っこしたユリエル、護衛騎士が連れ立って部屋を出て行く。
後には、侍女のナナだけが残った。
「私、リボンをつけたいって頼まれてたのに、マリーさんや真珠さんと遊んじゃって、ユリエル様に呆れられたかもしれない。侍女長に怒られたらどうしよう……」
ナナは呟いてため息を吐き、愚痴をこぼす。
いつまでも一人で落ち込んでいても仕方がないと気持ちを切り替え、ナナは食堂に行くために部屋を出た。
***
光月7日 夜(5時07分)=5月27日 21:07
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