第七百七十七話 マリー・エドワーズと真珠はナナが『盾』の絵を三つ揃えられるように応援し、マリーはフレンドからの着信が来たという知らせを聞き逃す

回転を続けるスロットを瞬きもせず凝視していたナナは、右手を置いている丸いボタンを一回押した。

左端のスロットの回転がゆっくりになり『盾』の絵を表示させて止まる。


「『盾』の絵が出たっ」


「わんわんっ」


表示された『盾』の絵を見て、マリーと真珠が盛り上がる。

ナナは回り続けるスロットを見つめながら口を開いた。


「『盾』の絵を揃えればいいんですよねっ」


「うんっ。頑張れ、ナナさんっ」


「わんわおっ」


「はいっ。頑張ります……っ」


ナナは真剣な表情で回るスロットを見つめ、そして右手を置いている丸いボタンを一回押した。

真ん中のスロットの回転がゆっくりになり……止まる。

『盾』の絵が表示された!!


「すごい!! ナナさんが『盾』の絵を二つ揃えた!!」


「わわ、わうう!!」


マリーと真珠に称賛されて、ナナは嬉しそうに微笑む。

だが、その表情を引き締めた。

絵は三つ揃えないといけないとナナは知っている。

マリーは息を詰めてナナの挙動を見守っていたので、マリーだけに聞こえる可愛らしいハープの音、フレンドからの着信が来たという知らせを聞き逃した。


『盾』の絵、『盾』の絵、来い……っ!!

ナナはそう強く念じながら、狙いを定めて右手を置いている丸いボタンを一回押した。

一番右端のスロットの回転がゆっくりになり……止まる。

『王冠』の絵が出た。


「あー。『盾』の絵、揃わなかった。残念……」


「『わうわん』きゅうん……」


マリーと真珠は『盾』の絵が三つ揃わなくてがっかりして肩を落とす。


「すみません。失敗しちゃいました……」


『盾』の絵を三つ揃えようと頑張ったナナも、悲しい気持ちになった。


「ナナさん、もう一回スロットやればいいよっ。今、ヘヴンズコインを出すからねっ」


マリーはナナが落ち込んでしまったことに気づいてそう言いながら、スロットマシーンの背面に回り、少し窪んだ取っ手に手を掛けてコイン補充口の蓋を開けた。

そこからスロットマシーンで遊ぶための『ヘヴンズコイン』を一枚取り出して蓋を閉める。


「ぎゃわんっ」


真珠は次は自分がスロットマシーンで遊ぶ番だと思っていたので、ナナが連続でスロットマシーンで遊ぶと知って涙目になった。

ナナは真珠が涙目で自分を見上げていることに気づいて、慌てて口を開く。


「あの、真珠さんっ。私、真珠さんにお手本を見せて頂きたいですっ」


ナナはそう言いながら、真珠の丸椅子から立ち上がる。

真珠は自分がスロットマシーンで遊べると思って大喜びで尻尾を振り、丸椅子に飛び乗った。



***


光月7日 夕方(4時56分)=5月27日 20:56

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