第七百六十話 マリー・エドワーズたちは背中の毛を毟られた真珠と合流し、教会に死に戻る
結局、ピンクの子猿の『テイム』に成功したプレイヤーはいなかった。
「マリーとユリエル様もあの子猿『テイム』してみたら?」
マーキースの問いかけに、マリーとユリエルはそれぞれに首を横に振る。
「私、テイムモンスターは真珠だけでいいの。ベッド狭くなっちゃうし、食費とか掛かりそうだし……」
マリーは今、妊娠中のマリーの母親のことを想う。
家族が増えることが確定しているのだから、今、養う人数を増やす余裕はマリーには無い。
「俺もあの子猿は『テイム』しなくていいかなと思ってる。真珠くんが毛を毟られてるの、可哀想だし。『アルカディアオンライン』はプレイヤーとテイムモンスターには痛覚設定が0だろうし、死に戻るとかログインし直せばたぶん、毛を毟られたところ、元に戻ると思うんだけど……」
ユリエルはピンクの子猿を背負って哀愁を漂わせている真珠を見つめて言う。
それから、ユリエルはプレイヤーたちを見渡して口を開いた。
「俺たち、教会に死に戻ります。たぶんピンクの子猿はこの場に残ると思うので、そうなったらプレイヤーの皆さんの好きにしてください」
ユリエルはそう言ってマリーとマーキースに視線を向ける。
ユリエルと視線を合わせたマリーは肯き、マーキースは口を開いた。
「ちょっと待って。教会に死に戻る前にガラスの欠片をちょうだい」
マーキースの言葉に、マリーとユリエルは自分たちがパーティーを組んで、この『孤王の領域』に来た理由を思い出した。
「忘れてた。ガラスの欠片、今渡すねっ。ステータス」
「俺も渡すよ。ステータス」
ユリエルとマリーはそれぞれにステータス画面を出現させて、頑張って収集したガラスの欠片をマーキースに差し出す。
ピンクの子猿を背中にへばりつかせた真珠がぼんやりとそれを見ていると、唐突にピンクの子猿は真珠の背中から飛び下りて走り出した。
「あっ!! ピンクの子猿が逃げた……っ!!」
「えっ!? どこ!? 猿の群れの方に行ったの!?」
ピンクの子猿の『テイム』にプレイヤーの一部は逃げた子猿に目を向け、ようやくピンクの子猿から解放された真珠は泣きながらマリーたちに駆け寄る。
マーキースにガラスの欠片を渡し終えたマリーは泣いている真珠を撫でて慰め、真珠の背中の一部がピンクの子猿に毛を毟られて円形脱毛症のようなハゲかたをしていることに気づいた。
真珠、よく頑張ったよ……。
「ねえ。そのガラスの欠片、どうするの?」
プレイヤーの女性に問いかけられたマーキースはマリーから受け取ったガラスの破片をアイテムボックスに収納し、ユリエルから彼が集めたガラスの破片を受け取りながら口を開いた。
「『錬金』スキルでガラスの靴を作ろうと思ってるんだ。やったことないから、うまくできるかわからないけど」
「ガラスの靴!? めちゃくちゃ興味あるんだけど、それ。よかったらフレンド登録してくれない? ガラスの欠片を渡せば、アタシの分も作ってくれる?」
「フレンド登録するのはいいけど、ガラスの靴はマリーの分を作り終えたらってことでいい? それもうまくできるかわからないんだけど」
マーキースはユリエルから受け取ったガラスの破片をアイテムボックスに収納しながら言った。
「いいよ。じゃあフレンド登録ね」
ユリエルはマーキースが女性プレイヤーとフレンド登録しているのを見ながら『ライト』を唱えまくってMPを減らしていた。
マリーは泣きじゃくる真珠を宥め、そしてマーキースがフレンド登録をし終えた頃に『ライト』を唱えまくってMPを減らし始める。
マリーと真珠、ユリエルはほぼ同時に、マーキースは大幅に遅れて教会に死に戻った。
***
マリー・エドワーズの種族レベル経験値が上昇 ※パーティーを組んでいるメンバーがモンスター討伐をしたため
種族:ヒューマン/レベル4(2145/4000)
マリー・エドワーズのスキル経験値が上昇
ライト レベル3(50/300)→ライト レベル3(90/300)
マリー・エドワーズのMP最大値が上昇 MP 63/63 → MP 0/64
光月4日 早朝(1時25分)=5月26日 23:25
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