第七百五十九話 マリー・エドワーズはプレイヤーたちにレアモンスターの情報を聞かせて欲しいと詰め寄られて怯える

「ええーっ!? なんで『テイム』できないの……っ!?」


「アー」


マーキースの叫び声を聞いて、真珠の背中にへばりつくピンクの子猿は首を傾げる。


「マーキース、ピンクの子猿を『テイム』できなかったの?」


「うん。あ、順番変わります」


マリーに肯き、マーキースは自分の後ろに並んでいるプレイヤーにそう言って列を離れた。


「きゅうん……」


誰でもいいから、真珠の背中から生暖かい物体を取り除いてほしい。

真珠は心から、そう願っている……。


列に並んでいるプレイヤーはピンクの子猿を『テイム』しようとして失敗し、肩を落として列から外れる。


「なんでマーキースはピンクの子猿を『テイム』できなかったんだろうねえ。情報屋さん案件?」


首を傾げながらマリーが言う。


「『白狼』の真珠みたいにテイム条件があるのかな?」


マーキースとユリエルと雑談しているマリーの声を拾ったプレイヤーたちが詰め寄る。


「テイム条件ってどういうことっ!?」


「ピンクの子猿を『テイム』する方法を知っているのなら教えてくれないかっ!?」


鬼のような必死な形相を浮かべた女性プレイヤーと大柄な男性プレイヤーに詰め寄られたマリーは怯えて後ずさる。

ピンクの子猿を背中に乗せた真珠とユリエルはマリーを庇うように彼女の前に立った。

マーキースは、マリーに詰め寄ったプレイヤーたちのプレイヤー善行値は下がっただろうなと思いながらマリーの隣に立つ。


「白い子犬ちゃん、動かないでよー。次はうちが『テイム』する番なのに!!」


「きゅうん……」


見ず知らずの美少女プレイヤーに怒られて、真珠は項垂れた。


「アー」


ピンクの子猿は項垂れた真珠の毛を毟っている。

ユリエルはマリーを守るために立っている真珠の頭を撫でて口を開いた。


「真珠くん。マリーちゃんは俺が守るよ。だから、プレイヤーたちに『テイム』をさせてあげて」


「わうわう。きゅうん……。……わん」


ユリエルの言葉を聞いた真珠は不承不承肯き、それでも怯えるマリーが心配で彼女を見上げる。

マリーは真珠と視線を合わせて肯いた。

今、マリーの側にはユリエルとマーキースがいてくれる。

だから大丈夫。

真珠もマリーに肯きを返し、そしてさっきまで居た場所に戻る。

ピンクの子猿は飽きることなく、真珠の背中の毛を毟っている……。


ユリエルはマリーに詰め寄ったプレイヤーたちに視線を向けて口を開いた。


「あなたたちは『情報屋』ムーブをしているデヴィット・ミラーというプレイヤーをご存知ですか?」


ユリエルの言葉を聞いた女性プレイヤーは首を傾げ、大柄な男性プレイヤーは肯いた。

マリーはレアモンスター『白狼』である真珠の情報を情報屋、デヴィット・ミラーに売った自分が話さなければいけないと思いながら口を開いた。


「あの、私、あそこにいる私のテイムモンスターの真珠の情報を情報屋さんに売りました。レアモンスターをテイムするには条件があるみたいで、えっと、情報屋さんはそういうのを特定するのが上手ですっ」


「貴重な情報、感謝する。怖がらせてしまったようですまなかった」


大柄な男性プレイヤーはマリーに頭を下げて謝罪し、謝罪を受けたマリーは首を横に振って微笑む。

マーキースはその様子を見ながら、謝罪をして許されたらプレイヤー善行値は回復するのだろうかと考えていた。


「アタシは情報屋ムーブ? してるっていうプレイヤーを知らないんだけど」


「それはそちらにいるプレイヤーに話を聞くか、あなたのフレンドたちに尋ねるかしていただけると助かります。俺たちはもうそろそろゲームをやめようと思っているので」


ユリエルはそう言って、ピンクの子猿を背負って項垂れる真珠に目を向けた。


「たぶんマリーちゃんが教会に死に戻ったら真珠くんも死に戻って、あのピンクの子猿だけがこの場に残ると思うんだよね。でも万一、ピンクの子猿が真珠くんの装備品とか装飾品に分類されると一緒に死に戻っちゃうかもしれないから列の最後のプレイヤーが『テイム』するまで、もう少し待とう」


「はいっ」


「了解」


ユリエルの言葉にマリーとマーキースは肯く。




***


光月4日 早朝(1時11分)=5月26日 23:11



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