第七百二十五話 マリー・エドワーズと真珠は『復活の間』でマーキースと合流し、教会を出て西の森に向かう



マリーと真珠は港町アヴィラの教会に死に戻り、同時期に死に戻ったマーキースの姿を探す。

社会人プレイヤーや、家事を終えたプレイヤーが増えたせいか、教会の『復活の間』は賑わっていて、マーキースの姿を見つけられない。


「マーキース、どこ……!?」


「わーうーう!!」


マリーと真珠はマーキースの名前を呼びながら彼の姿を探す。


「マリー、真珠、いるー!?」


真珠の耳は、かすかに聞こえるマーキースの声を捉えた!!


「わうー!! わーうーう、わっう!!」


真珠はマリーを促し、人波を縫って走り出す。


「真珠、待って……っ!!」


マリーは真珠の姿を見失わないように、必死に追いかけた。


「わーうーう!!」


真珠が青いローブを着たマーキースを見つけて突進する。

マーキースは自分をめがけて駆け寄ってくる真珠に気づいて破顔し、両手を広げた。


「真珠!! よかった、会えて……!!」


「わーうーう!!」


真珠はマーキースに向かってジャンプし、マーキースが真珠を抱き留めた。

真珠を見失わないように必死に追いかけてきたマリーが、マーキースと真珠に合流する。


「よかった。真珠はマーキースを見つけたんだね。すごいね、真珠っ」


「わんっ」


マリーに褒められた真珠は誇らしくて吠えた。

マーキースは真珠を抱っこしてあやしながら、マリーを見つめて口を開く。


「人がいっぱいいるから、本当、合流できてよかったよ。とりあえず教会を出よう。西の森に土を取りに行こうと思ってるんだけど、付き合ってくれる?」


「私はいいよっ。真珠もいいよね?」


「わんっ」


マリーの言葉に真珠も肯く。

そしてマリーと真珠を抱っこしたマーキースはお喋りをしながら歩き、教会を出て、西の森へと向かった。


マリーと真珠を抱っこしたマーキースは西門に到着した。

西門には、西の森へ向かうプレイヤーの長い列ができていた。

マリーたちは列の最後尾に並んだ。


「いつも、この列に並ぶのめちゃくちゃ面倒くさいと思うんだよね。今日はマリーと真珠が一緒だからいいけど、一人の時は暇でさぁ」


「そっかぁ。私と真珠はいつも一緒だから一人の時とかないけど、一人で列に並ぶのはちょっと寂しいね」


「くぅん……」


「それで、この前、列に並んでて暇だったから、適当にフレンドにメッセージ送っていたんだけど」


「えー? 私、マーキースからメッセージ貰ってないよね?」


「マリーは真珠がいるし、ユリエル様とデート中かもしれないから遠慮した。フレンドの中でも『この人今、高確率で暇そう!!』っていう人を選んでメッセージを送ってみたんだけどね。それで何度かメッセージのやり取りした後に、なんとなく思いついて、あたしのプレイヤー善行値を見てみたわけよ」


マーキースのロールプレイ時の一人称『ボク』ではなく、プレイヤーの晴菜がいつも使う一人称の『あたし』になっている。

だがマリーも真珠も気にせず、マーキースの話に耳を傾ける。


「そうしたら、あたしのプレイヤー善行値が上がってたの!! 相手が自分のメッセージを喜んでくれるとプレイヤー善行値が上がるんじゃないかと思うんだよね。この情報って情報屋さんに売れると思う?」


「売れるよ、マーキース!!」


マリーは力強くそう言い、真珠も何度も首を縦に振る。


「じゃあ、情報屋さんの都合がいい時に会ってもらおう。し……ろい粉の固有クエストが終わったら、情報屋さんに連絡を取ってみるね」


「そんな悠長なこと言ってていいの? 誰かにその情報、先に売られちゃったりしない?」


「儲けを考えるならユリエル様に白い粉を売った方が儲かると思う。絶対」


マーキースが言う『白い粉』は『錬金塩』のことなのだが、周囲のプレイヤーはマーキースの言葉を聞いて『アルカディアオンライン』には違法ドラッグ系のアイテムがあるのかとざわつく。

だが、雑談に夢中になっているマリーたちは周囲のプレイヤーのひそひそ声に気づかない。


その後、雑談をしているうちに列は進み、マリーたちは無事に西門を出ることができた。



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