第七百二十六話 マリー・エドワーズたちはマーキースの木箱4箱に土を入れた後、マリーの木箱に土を入れる
マーキースが発動させた『ライト』の光を頼りに、マリーたちは西の森の入り口に到着した。
時間帯のせいか、NPCの姿はなく、プレイヤーばかりのようだ。
「邪魔になっちゃうから、人がいないところに行こう」
マーキースがそう言って歩き出す。マーキースの歩みに従い、光の玉が動き、マリーと真珠はマーキースに続いた。
「この辺でいいかな」
人気が無い場所まで移動したマーキースはそう言って立ち止まり、アイテムボックスから空の木箱を取り出して地面に置き、その後、スコップを取り出して土を掘り始めた。
「マーキース。私、スコップもシャベルも持ってない……」
シャベルを持っていないことは『銀のうさぎ亭』の庭に『ラブリーチェリー』の種を埋めた時に気づいていたけれど、その後、シャベルを買うことはなくそのまま過ごしてしまった。
「すぐ終わるから、マリーと真珠は見てて」
「わーうーう、わんわぅ、わう!!」
真珠は自分が役に立つところを見せたくて、前足で猛然と土を掘り始めた。
「真珠、すごい!!」
「真珠、やるね」
マリーとマーキースに褒められ、真珠は嬉しくなって掘って掘って掘りまくる。
マリーは真珠が周囲にまき散らした土を両手ですくい、マーキースが土を入れている木箱に運ぶ。
そして、マーキースと真珠、マリーがそれぞれに頑張って結果、木箱は土でいっぱいになった。
マリーと真珠は土でいっぱいになった木箱を満足げに見やり、息を吐いた。
マーキースは土でいっぱいになった木箱を左腕の腕輪に触れさせてアイテムボックスにしまった後、新たに空の木箱を取り出した。
マリーと真珠は新たに空の木箱を見て目を丸くする。
今、木箱に土をいっぱい詰め込んだばっかりなのに……!!
マーキースは空の木箱を見つめて呆然としているマリーと真珠に気づいて苦笑し、口を開いた。
「この木箱を入れて、あと4箱、土を入れるよ」
「あと4箱も土を入れるの!?」
「くぅん?」
マリーはマーキースがシャベルで土を入れ始めた木箱を見つめ、真珠は首を傾げる。
マーキースがシャベルで木箱に入れているのを見た真珠は、もう一度木箱に土を入れる必要があると理解して、また頑張って土を掘り始めた。
真珠が土を掘り始めたのを見て、マリーも土を両手で掬い、木箱に運ぶ。
マーキースと真珠、マリーがそれぞれに頑張って結果、4箱の木箱は土でいっぱいになった。
「今度こそ終了だねっ」
「わんっ」
マリーがそう言うと真珠は満足げに肯いた。
マーキースはマリーと真珠に視線を向けて微笑み、口を開く。
「マリーと真珠が手伝ってくれたおかげで助かったよ。ありがとう」
スキルポイントをSTR値につぎ込み、腕力を上昇させていたマーキースが主に土を入れていたのだが、ひとりぼっちの作業より、マリーと真珠との共同作業の方が楽しかったのでお礼を言う。
マリーと真珠は達成感を胸に、マーキースに肯いた。
マリーは4箱目の土がいっぱいになった木箱を左腕の腕輪に触れさせてアイテムボックスにしまっているマーキースに視線を向けて口を開く。
「でも、ツボ作るのに、土がいっぱいいるんだねえ」
「うん。木箱ひと箱で、ツボが2個できる感じ」
「そうなんだ。あっ。私も空の木箱を持ってるから、土を入れて行こうかな。私も『錬金』スキルを取得して、錬金術師ギルドに登録したんだよっ。青いローブもあるよっ。ステータス」
マリーはアイテムボックスから、錬金術師ギルドで支給された自分の青いローブを取り出して着て、マーキースに見せた。
「マリー似合うね」
「わうー、わんわんっ」
錬金術師ギルドで支給された青いローブを着た姿を褒められ、ご機嫌なマリーは、ラブリーチェリーを入れていた木箱をアイテムボックスから取り出す。
真珠はマリーがアイテムボックスから取り出した木箱がラブリーチェリーを入れていた木箱だと気づいて、もうラブリーチェリーはなくなってしまったことを思い出し、悲しい気持ちになって項垂れた。
マーキースは真珠が項垂れていることに気づいて歩み寄り、しゃがみ込んで真珠と目を合わせ、口を開いた。
「真珠、元気ないね。疲れちゃった?」
「わーうーう……。くぅん……」
「えっ? 真珠、元気ないの? 大丈夫?」
木箱を出し終えたマリーが項垂れる真珠と真珠の顔を覗き込んで心配しているマーキースに歩み寄る。
しゃがみ込んでいたマーキースは立ち上がり、マリーに視線を向けて口を開いた。
「マリーは真珠についていてあげて。あたしが木箱に土を入れるから」
「わかった。ありがとう、マーキース」
マリーは真珠を抱っこした。
真珠はマリーにすり寄って甘える。
マーキースはシャベルで土を掘り、どんどん木箱に入れて行った。
***
風月29日 真夜中(6時42分)=5月25日 22:42
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