第七百二十話 マリー・エドワーズと真珠が領主館でアップルパイを食べている途中にマーキースからのメッセージが来て、マーキースに会いに行く



マーキースへのメッセージを送信し終えたマリーは、真珠のリクエストで、真珠を目隠しして『だーれだ?』と問いかける遊びを始めた。


真珠はユリエルから教えてもらった『だーれだ?』の遊びが大好きだ。

10回目の『だーれだ?』『わうー!!』が終わった直後に部屋の扉が静かに開き、領主館の侍女でマリーと真珠の世話をしてくれているナナが部屋に入ってきた。


ナナはアップルパイが乗った皿等を乗せたトレイを手にしている。

マリーと真珠はベッドから下りて、マリーはテーブルの椅子に座り、真珠はマリーの椅子の隣にお座りをする。

食べる準備は万端だ!!


マリーの前にアップルパイが乗った皿と銀色のフォーク、ソーサーに乗った紅茶のカップが置かれた。

真珠の分のアップルパイの皿と、平皿に入ったミルクは床にお座りをしている真珠の前に置かれる。


「いただきますっ」


「わうわうわうっ」


マリーと真珠はそう言って、それぞれ、アップルパイを頬張った。

おいしい!!

領主館のアップルパイは何度食べてもおいしくて嬉しい。

マリーは笑顔になり、真珠は尻尾を振る。


マリーのアップルパイが半分に減ったその時、可愛らしいハープの音が鳴った。

フレンドからのメッセージが来たようだ。マリーはフレンドからのメッセージを確認するためにステータス画面を出現させた。

メッセージの送り主はマーキースだ。

マリーはマーキースからのメッセージを表示して確認する。


ナナは突然アップルパイを食べるのをやめ、虚空を凝視し始めたマリーを静かに見守る。

聖人の奇行には、だいぶ慣れた。

真珠は自分のアップルパイを食べ、平皿に入ったミルクを舐めることに全力を傾けている。





マリー。今、領主館の前にいるんだけど、会えそう?

ユリエル様にもメッセージ送ったんだけど返信が無いんだよね。

5分待って返信が無いようなら、錬金術師ギルドに戻るね。





「5分!! 早く返信しなくちゃ!!」


マリーは慌ててマーキースへの返信を書き始める。





マーキース、今行くから待ってて!!





マーキースへの返信を書き終えて送信したマリーは、椅子から下りて真珠とナナに視線を向け、口を開いた。


「ナナさん、真珠。私、今から領主館の門の前にいるマーキースに会いに行ってくるねっ」


マリーはそう言ってナナと真珠の返事を待たずに小走りで扉の方に駆けて行き、扉を明けて外に出て行く。


「わうー!! わんわぅ、わうっ!!」


マリーに置いて行かれた真珠は、慌ててマリーの後を追って走り出す。


「えっ!? こういう場合って、どうすればいいの……っ!? マリーさん、真珠さん、待って……!!」


真珠に一拍遅れて、ナナがマリーと真珠の後を追って走り出した。


***


風月29日 昼(3時55分)=5月25日 19:55



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