第七百十九話 マリー・エドワーズと真珠は領主館のレイチェルが子どもの頃に使っていた部屋で目覚め、マリーはマーキースにメッセージを送信する



マリーが目を開けると、視界に天蓋が映る。

部屋の中は明るい。

今、ゲーム内の時間帯は『朝』だろうか?


マリーはピンク色の布とレースで作られた天蓋付きのベッドに寝かされていた。

マリーの隣には真珠もいる。


「わうわぅ。わうー」


目覚めた真珠がマリーにすり寄る。

マリーは真珠の頭を優しく撫でて口を開いた。


「真珠。おはよう。ここって領主館のレイチェル様が子どもの頃に使っていた部屋だよね?」


「わんっ」


真珠はマリーの言葉に肯く。

真珠はマリーと一緒に何度もこの部屋のベッドに寝かされ、目覚めたので、この部屋のことを覚えている。

真珠がマリーの言葉に肯いた直後に部屋の扉が静かに開き、黒髪で黒い目のメイド服を着た少女、ナナが部屋に入ってきた。


ナナは領主館の侍女長、グラディス・ブロックウェルに指導を受けていて、何度かマリーと真珠の世話をしてくれている。

ナナは、そそっかしいところもあるが、力持ちで優しい少女だとマリーは思う。


「お目覚めだったんですね。おはようございます。マリーさん、真珠さん」


「おはようございます。ナナさん」


「わうわうわうぅわう」


マリーと真珠はナナに挨拶をした。


「ユリエル様がマリーさんと真珠さんはすぐにお目覚めになると思うから、洋服のまま着替えさせないようにと仰って。今はユリエル様も自室でお休みなので、マリーさんと真珠さんはこの部屋でお待ちください。何か召し上がりますか? お菓子ならすぐにご用意できますけど」


「わうう!!」


真珠は、ナナの『何か召し上がりますか? お菓子ならすぐにご用意できますけど』という言葉に即座に反応して『食べる!!』と叫ぶ。

マリーは真珠の言葉を通訳するべく、ナナを見つめて口を開いた。


「真珠は『食べる』と言ってます。私も甘いお菓子を食べたいです」


「かしこまりました。準備をしてきますので少々お待ちくださいませ」


ナナはマリーと真珠に一礼して部屋を出て行った。


「あっ。私の『疾風のブーツ』どこにあるだろ?」


ベッドに寝かされた時に脱がされた『疾風のブーツ』を探して、マリーは部屋を見回した。


「わうー。わんわんっ」


真珠はベッド脇に置いてある『疾風のブーツ』を見つけてマリーに知らせる。

マリーは真珠の視線の先に、自分の『疾風のブーツ』が置かれているのを見て、ほっと息を吐いた。


『疾風のブーツ』はAGI値を上昇させてくれるレアアイテムなので、失くしたくない。

マリーは『疾風のブーツ』を見つけてくれた真珠にお礼を言って微笑み、そして『疾風のブーツ』を履いた。


「そうだ。マーキースにメッセージを送ろう。ステータス」


マリーはステータス画面を出現させて、マーキースへのメッセージを書き始めた。





マーキース、私、今ゲームにログインしたよ。

マリーと真珠は領主館にいます。

会えそうならメッセージをください。

領主館に来られなそうなら、また次の機会にお金を返してね。





マリーはマーキースへのメッセージを書き終えて送信した。


***


風月29日 昼(3時21分)=5月25日 19:21



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