第七百十七話 マリー・エドワーズはユリエルや真珠と一緒に意気揚々と『銀のうさぎ亭』を出ようとしたその時、強制ログアウトする



「マリー、シンジュ、起きたのか。おはよう」


カウンター内に立っている祖父が、一階に下りてきたマリーと真珠に気づいて笑顔で言った。


「おはよう、お祖父ちゃん」


「わううう」


マリーと真珠も祖父に挨拶を返す。


「あのね、お祖父ちゃん。私と真珠ね、今日、ユリエル様と遊ぶ約束をしてるの。ユリエル様が馬車で迎えに来てくれるんだよ」


「わんわんっ」


マリーの言葉に真珠も肯く。


「ユリエル様っていうのは領主様のご子息の名前だったか? ここまで馬車で迎えに来てくれるなんて、マリーとシンジュは大物だなあ」


「ユリエル様と私と真珠は仲良しだからねっ」


「わんっ」


自慢げに言うマリーに真珠も肯く。


宿泊客が来なかったので、祖父とマリーが楽しくお喋りをして、真珠が尻尾を振りながら楽しく話を聞いていると扉が開いて白地に赤いラインが入った制服を着た男が入ってきた。

その男に続いて、ユリエルが姿を現す。

港町アヴィラの領主子息であるユリエルは、馬車で外出する時にはいつも、彼を護衛する騎士を連れている。


「マリーちゃん、真珠くん。迎えに来たよ」


軽装だが華やかな装いのユリエルは、マリーと真珠に微笑んで歩み寄る。


「ユリエル様……っ」


「わうわう……っ」


マリーと真珠はユリエルに駆け寄った。

そしてユリエルに駆け寄ったマリーと真珠は祖父を振り返り、元気よく言う。


「お祖父ちゃん、行ってきます!!」


「わんわんっ!!」


「気をつけてな」


マリーと真珠は祖父の言葉に力強く肯き、ユリエルや彼の護衛騎士と共に意気揚々と『銀のうさぎ亭』を出ようとしたその時、サポートAIの声が響く。


「プレイヤーの身体に強い揺れを感知しました。強制ログアウトを実行します」


その言葉を聞いた直後、マリーの意識は暗転した。


悠里が目を開けると、祖父の顔が目の前にあった。


「悠里、起きたか。カレーピラフとロールキャベツができたぞ」


「……え? ああ、そっか。もう晩ご飯の時間なんだ」


悠里は祖父が悠里の身体を揺らして強制ログアウトをしたのだと理解する。

祖父は悠里を起こして晩ご飯ができたと伝え終え、一人で部屋を出て行った。


「うわー。強制ログアウトかぁ。せめて馬車に乗ってから強制ログアウトしたかった……」


マリーの祖父やユリエルの護衛騎士、御者等の男手がある場所で強制ログアウトをしたので、少しはましかもしれない。

こういう時はマリーが幼女、真珠が子犬でよかったと思う。


悠里は横たわっていたベッドから起き上がり、ヘッドギアを外して電源を切る。

それからゲーム機の電源を切った。

ヘッドギアとゲームをつなぐコードはそのままにしておく。

とりあえず、晩ご飯を食べに行こう。


ベッドから下りた悠里は伸びをして部屋を出た。




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