アルカディアオンライン【高橋悠里 中学一年生・一学期終了編】
第七百十六話 マリー・エドワーズは目覚めてユリエルからのメッセージを確認して返信し、寝ている両親を起こさないように真珠とそーっと部屋を出る
第七百十六話 マリー・エドワーズは目覚めてユリエルからのメッセージを確認して返信し、寝ている両親を起こさないように真珠とそーっと部屋を出る
マリーが目を開けると、部屋の中は薄明るかった。でも、明るいというほどではない。
マリーと共に目覚めた真珠が、マリーにすり寄って甘える。
マリーは真珠の白い毛並みを優しく撫でて、真珠をぎゅっと抱きしめた。
それから、マリーはステータス画面を出現させて明かりにする。
父親と母親のベッドに視線を向けると、二人ともベッドで眠っていた。
大音量のいびきが聞こえなかったから、父親は部屋にいないと思ったけれど……。
父親は横向きで寝ているので、いびきがおさまったのだろうか?
それとも、食堂を宿泊客だけに使わせるという『働き方改革』をしてくれていて、だから疲労感が軽減していびきをかかなくなったのだろうか。
マリーが父親に金貨5枚を手渡したのに、まだ、宿泊客以外の客を入れて、食堂を営業していたりはしないよね……?
マリーがそんなことを考えていると、可愛らしいハープの音が鳴った。
フレンドからの返信が来たようだ。ユリエルからのメッセージかもしれない。
マリーはフレンドからのメッセージを確認する。
真珠は薄明るい部屋の中、ベッドに転がって遊んでいる。
メッセージの送り主はユリエルだった。
マリーは急いでユリエルからのメッセージを確認する。
♦
マリーちゃん。メッセージをありがとう。
今から馬車で『銀のうさぎ亭』にマリーちゃんと真珠くんを迎えに行くね。
♦
ユリエルのメッセージを読み終えたマリーは、急いで『真珠と一緒に待ってます!!』と記載して送信した後、ベッドを下りてクローゼットを開けた。
袖にフリルがある可愛い水色のワンピースに着替え、脱いだ寝巻を畳んでベッドの上に置く。
その後で『疾風のブーツ』を履いて、準備完了だ。
『アルカディアオンライン』では、プレイヤーの主人公は髪をとかさなくてもいつも綺麗で、顔を洗わなくても目やにも汚れもないのが便利で嬉しい。
着替えを終えて支度を整えたマリーは、ひとりでベッドで転がって遊んでいる真珠に駆け寄って口を開いた。
「真珠。ユリエル様が今から馬車で、私と真珠を迎えに来てくれるって」
マリーが寝ている両親を起こさないように小声で言うと、真珠は素早く起き上がり、無言で肯く。
真珠は静かにした方がいい時は、ちゃんと静かにできる。
マリーが小さな声で真珠に話す時は、静かにした方がいいと真珠は知っている。
「真珠。一階で一緒にユリエル様を待とうね」
小さな声で言うマリーに真珠は無言で肯き、ベッドから飛び下りる。
そしてマリーと真珠は寝ている両親を起こさないように、なるべく足音を立てないようにそーっと歩いて、静かに扉を開けて部屋を出た。
部屋の外に出て、そーっと扉を閉めたマリーは、真珠と視線を合わせて息を吐く。
部屋からの脱出、成功!!
寝ている両親を起こさずに部屋を出られた。よかった。
マリーは真珠に笑顔を向け、真珠は達成感を胸に尻尾を振る。
このところ、遊びに行こうとしてNPC家族に止められることが多かったので、今からユリエルと遊べると思うと、マリーも真珠もわくわくしている。
マリーと真珠は、段差の大きい階段を弾むような足取りで下りて、一階へと向かった。
***
風月29日 早朝(1時45分)=5月25日 17:45
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