第七百十三話 高橋悠里はダイニングで祖母の手作りレアチーズケーキを食べて『行方不明になった生徒が二人いる』という話を聞く



悠里はダイニングで祖母の手作りレアチーズケーキをおいしく食べながら、紅茶を飲む。


「お祖母ちゃん。レアチーズケーキの底に敷いてるのって、ビスケット?」


悠里が問いかけると、祖母は微笑んで肯いた。


「そうよ。お母さんがおやつに買っておいたのを使っていいって言ってくれたから敷いてみたの」


「おいしい。タルト生地もおいしいけど、ビスケットでもおいしいね」


父親を除く、高橋家の全員で祖母の手作りレアチーズケーキを食べ終え、祖父はコーヒーを、祖父以外は紅茶を飲み終えた。

悠里は学校から帰宅した直後に母親が言っていた『行方不明になった生徒が二人いる』という話を聞くために口を開いた。


「お母さん。学校から『行方不明になった生徒が二人いる』っていう連絡が来たの?」


母親は悠里の言葉に肯き、口を開く。


「そうなのよ。でも行方不明になった生徒の名前は書いてなかったの。『井上歯科』の娘さんの愛子ちゃんが行方不明になったの?」


「朝のホームルームで担任が『いのうえあいこ』さんが行方不明になった言ってた。通学鞄と教室に、靴は昇降口の靴箱にあったみたいだよ」


悠里の言葉を聞いた母親と祖母、祖父の顔が曇る。


「行方不明になった子たちが戻るまで、悠里を送り迎えした方がいいかしら?」


祖母が心配そうに言う。

悠里は祖母に微笑んで口を開いた。


「朝は、はるちゃんと一緒に登校するし、帰りは要先輩が家まで送ってくれてるの」


「でも要先輩は、悠里を送った後、ひとりで家に帰るのよね? 危ないんじゃない?」


祖母は悠里が要のためにチョコチップクッキーを焼いたことを知っていて、祖父は悠里と要が家の前で一緒にいたところを目撃しているが、母親は『要先輩』のことを知らないので怪訝な顔をした。


「要先輩って誰? お祖母ちゃんとお祖父ちゃんは知ってるの?」


「あっ。私、友達と『アルカディアオンライン』をプレイする約束してたんだっ。ごちそうさまっ。お皿とフォークとカップ、キッチンで洗ってくるねっ」


悠里は母親の追及を逃れるために、レアチーズケーキを乗せていた皿と使ったフォーク、マグカップを重ねて席を立ち、キッチンへと向かった。

母親は悠里への追及を諦め、祖母と祖父に質問をしている。

祖父は席を立って母親の質問をかわし、祖母は曖昧な笑みを浮かべて母親の言葉をやり過ごしている。


悠里はキッチンでレアチーズケーキを乗せていた皿と使ったフォーク、マグカップを洗い終え、キッチンを出てトイレに向かう。


トイレを済ませた後、悠里は二階の自室に向かった。

要からの返信は来ているだろうか。



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