第七百十二話 高橋悠里は帰宅して、母親から『行方不明になった生徒が二人いる』という話を聞いて驚き、着替えて要にメッセージを送信する



悠里が家に帰ると、母親と祖母、祖父が出迎えてくれた。

祖母は悠里の顔を見ると、泣きそうな顔で微笑み、口を開く。


「よかった。悠里が無事に帰ってきて。帰ってくるのがもう少し遅かったら、私、お祖父ちゃんと一緒に悠里を学校まで迎えに行こうと思っていたのよ」


祖母の言葉に続いて、母親が口を開いた。


「さっき、学校からメッセージが届いたの。『行方不明になった生徒が二人いるから、生徒の身辺に注意して、家出等するような悩みを抱えていないか、各家庭で確認してください』って」


「えっ!? 行方不明になったのって『いのうえあいこ』さんだけじゃないの!?」


『行方不明になった生徒が二人いる』という母親の言葉に驚いた悠里が目を丸くして言う。

悠里の言葉を聞いた母親が眉をひそめて口を開いた。


「井上愛子ちゃんって『井上歯科』の娘さん? 行方不明になったのって、愛子ちゃんなの?」


「お母さんも悠里も、玄関に突っ立って話していないで、家の中で話したらどうだ?」


祖父が悠里と母親の会話に割り込んで言い、リビングに向かう。


「そうね。お祖父ちゃんの言う通りね。悠里は手を洗って、うがいをしていらっしゃい。お母さん、冷蔵庫で冷やしていたレアチーズケーキが固まった頃だから、お茶にしましょう」


祖母が場をとりなすように言って、悠里と母親はそれぞれに肯いた。

祖母の手作りレアチーズケーキを食べられるとわかって、悠里の気持ちが少し上がる。


悠里は二階の自室に行き、通学鞄を置いて不織布マスクをゴミ箱に捨て、一階の洗面所で手を洗い、うがいをする。

それから自室に戻って、制服から部屋着に着替えた。


「そうだ。要先輩に家まで送ってもらったお礼のメッセージを送っておこう。要先輩、無事に家に着いてるよね……?」


母親から『行方不明になった生徒が二人いる』と聞いたから、不安な気持ちになってしまう。

悠里は通学鞄からスマホを取り出して要へのメッセージを書き始めた。





要先輩、家まで送ってくれてありがとうございました!!

もう、おうちに着きましたか?

私は、家に帰ったらお母さんから『行方不明になった生徒が二人いる』って聞いて、すごく驚いています。

学校から保護者に連絡があったみたいだから、要先輩のお母さんも知っているかもしれないです。


お母さんに『行方不明になった生徒が二人いる』っていう話を聞いた後に『アルカディアオンライン』をプレイするつもりです。

ゲームにログインしたら、ユリエル様にメッセージを送りますね。

時間が合ったら一緒に遊んでもらえたら嬉しいです。





悠里は要へのメッセージを書き終えて送信し、スマホを机の上に置いて自室を出た。




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