第七百十話 高橋悠里は部員の姿が少ない音楽準備室で要からのメッセージを読み、返信してひとりで部活を頑張ろうと思う

帰りのホームルームを終えると、球技大会でバレーボールやバスケットボールを選んだクラスメイトたちが、放課後にチーム練習をするか、バスケ部やバレー部に頼んで練習試合をさせてもらおうということを話し始めた。


晴菜は女子のバレーボールで同じチームになったクラスメイトに話しかけられている。

個人競技の卓球を選んだ悠里には関係ない話し合いだ。


悠里は晴菜に手を振って教室を出て階段を上がり、音楽準備室に向かう。

今日は音楽室を合唱部が使う日なので、吹奏楽部は教室でパート練習だ。

合奏をするのも楽しいけれど、サックスパートのパート練習も楽しい。

悠里に意地悪をする三年生の佐々木美羽が部活をやめてから、部活で怖いと思うことや悲しいと思うことがなくなって嬉しい。


音楽準備室に足を踏み入れた悠里は、いつもより吹奏楽部の部員の人数が少ないように感じて首を傾げた。

悠里がサックスケースをしまっている棚から自分が使っているアルトサックスケースを出し終えても、サックスパートのメンバーは誰も音楽準備室に現れない。


「要先輩、今日部活に来ないのかなあ……? メッセージとか来てるかな」


悠里は通学鞄に入れていたスマホを取り出した。

要からのメッセージが来ている。

悠里は要からのメッセージを確認する。





悠里ちゃん。今日の放課後は球技大会のバスケのメンバーと練習をすることになったから、部活には行けないかも。ごめん。

でも、一緒に帰りたいから待ち合わせしよう。サックスパートがいつも使ってる1年3組の教室で待ってて。

朝のホームルームで一年生の女子が行方不明になったって聞いたから、その子が無事に帰ってくるまでは絶対、一人で行動しないようにして欲しい。





要からのメッセージを読み終えた悠里は、今、音楽準備室に吹奏楽部員が少ない理由を理解する。

皆、球技大会の練習をしているのだ。個人競技の卓球を選んだ悠里はもしかしたら少数派なのかもしれない。


悠里は要と部活ができなくて寂しい気持ちと、要と一緒に帰れる嬉しい気持ちと、要が悠里のことを心配してくれることがくすぐったいような気持ちを抱えながら彼への返信を書き始める。





要先輩。球技大会のバスケの練習、頑張ってください!!

私はサックスの練習頑張りますね。

練習が終わったら、1年3組の教室で要先輩のことを待ってます。





悠里は記載したメッセージを要に送信した。

そして、自分のアルトサックスのサックスケースと通学鞄を持って1年3組の教室に向かった。

教室にサックスケースと通学鞄を置いたら、メトロノームと楽譜を取りに音楽準備室に戻ろう。



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