第六百九十一話 高橋悠里と要は手を繋いで駅前に向かい、雑貨店でフォトフレームとアルバムを買って贈り合う
中間テスト開けの、久しぶりの吹奏楽部の部活動を終えた悠里は音楽準備室で楽器を片づけ、要にラッピングしたチョコチップクッキーを渡した後、通学鞄を持って要と音楽準備室を出た。
「松本さん、部活に来なかったね」
通学鞄を片手に持ち、片手を悠里と手を繋ぎながら廊下を歩く要が言う。
生徒会室にクラスメイトの女子ふたりを連れて行った晴菜は、合奏が終わり、片づけが終わっても音楽室にも音楽準備室にも現れなかった。
「今週末の土曜日に、球技大会があるからだと思います。生徒会は体育の先生たちと協力して球技大会を運営しないといけないみたいで、はるちゃんのカレシが生徒会の手伝いをしているので」
「そうなんだ。俺のクラスは今日の帰りのホームルームで球技大会の希望種目、担任にノートパソコンのメッセージを使って伝えるように言われたけど、悠里ちゃんのクラスもそう?」
「はい。私は卓球にしました。バスケもバレーボールもチーム戦だから、迷惑かけたらと思うと怖くて。要先輩はどの種目に出ますか?」
「俺はバスケを選んだよ。バスケとバレーと卓球の中では、一番バスケが好きだから」
「そうなんですねっ。私、絶対に応援に行きますっ。私、卓球はきっと一回戦で負けると思うので」
悠里と要は手を繋いだままお喋りをして、ゆっくりと、歩調を合わせて階段を下りる。
「悠里ちゃんは運動苦手なの?」
「得意じゃないですけど苦手ではないです。あれ? 得意じゃないということは苦手ということ……?」
悠里はこれまでの体育の授業や運動会のことを思い返しながら混乱した。
要はそんな悠里を可愛いと思いながら見つめる。
悠里は自分が『運動が得意か苦手か』を言語化することを諦めて話題を変えようと試みる。
「えっと、要先輩。今日、フォトフレームとアルバムを買いに行きませんか? 今日は私、ちゃんとお金を持ってきましたっ」
悠里は要と一緒にフォトフレームとアルバムを買いに行きたくて、自分の銀行口座からお金を引き出して財布に入れておいたのだ。
「うん。行こうか」
悠里の言葉に目元を和らげ、要が肯く。
そして二人は駅前に向かった。
悠里と要は駅ビルの雑貨店で、お互いのフォトフレームを選び合い、お揃いのアルバムを買い、贈り合った。
悠里は要のために木目が温かみを感じさせるフォトフレームを選び、要は悠里のために白を基調にした可愛らしいフォトフレームを選んだ。
アルバムはクリーム色の表紙の物を二人とも気に入ったので、同じものを二つ買った。お揃いだ。
その後、悠里と要はフローラ・カフェ星ヶ浦駅前店に入り、要が『チョコチップクッキーのお礼に奢る』と言って、自販機に向かった。
悠里は要の言葉に素直に甘えることにして、二人掛けのテーブル席に座り、テーブルに置いてある消毒液で手指を消毒した。
そしてテーブル脇の棚に置かれた花の模様が描かれたカラフルなボックスから要と自分の分のマスクケースを取り出して要を待つ。
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