アルカディアオンライン【高橋悠里 中学一年生・一学期終了編】

第六百九十二話 高橋悠里はフローラ・カフェ星ヶ浦駅前店でリアルの『ネクタル』に遭遇する

自販機で買い物を終えた要が悠里の待つテーブルに戻ってきた。

トレイの上には見覚えがあるカップが二つ。

「これって『ネクタル』？」

『アルカディアオンライン』のフローラ・カフェ港町アヴィラ支店で真珠と一緒に飲んだメロン味の『ネクタル』にそっくりの見た目をしている。

悠里の問いかけに、要は目元を和らげて肯く。

「うん。悠里ちゃんは『ネクタル』をもう知ってたんだ。俺はさっき初めて知ったよ。自販機に『新商品』ってポップがあったから買ってみたんだ。ストローも食べられるみたいだよ」

「私はこの『ネクタル』を『アルカディアオンライン』のフローラ・カフェ港町アヴィラ支店で真珠と一緒に飲んだんですけど……まさかこれ、一つ2500円とか……？」

おそるおそる尋ねた悠里の言葉には答えず、要はテーブルに置いてある消毒液で手指を消毒して、悠里が用意したマスクケースにグレーの不織布マスクを入れて微笑んだ。

「悠里ちゃん。『ネクタル』飲もうよ。『アルカディアオンライン』の『ネクタル』と、この『ネクタル』が同じ味かどうか教えてほしいな」

要はそう言った後、極太ストローを取り出してさし『ネクタル』を飲み始めた。

悠里は要から『ネクタル』の価格を聞くのを諦め、マスクケースにグレーの不織布マスクを入れ、そして要に『ネクタル』を奢ってもらったお礼を言った後『ネクタル』に極太ストローをさす。

口に含んだ極太ストローは甘く、吸い上げた『ネクタル』はメロンの味がした。

『アルカディアオンライン』と同じ、メロンオレだ。

悠里は要に笑顔を向けて口を開いた。

「要先輩。『ネクタル』は『アルカディアオンライン』のフローラ・カフェ港町アヴィラ支店と同じ味がします。たぶんっ」

「そうなんだ。今度、真珠くんも一緒に三人でフローラ・カフェ港町アヴィラ支店に行こうね」

「はいっ。この前は、真珠、最初に甘いストローをどんどん食べちゃったんですよ」

悠里は要と『アルカディアオンライン』のことを楽しく喋り、そして『ネクタル』を飲み終え、極太ストローを食べ終えてトレイやカップ等を片づけ、そしてフローラ・カフェ星ヶ浦駅前店を後にした。

フローラ・カフェ星ヶ浦駅前店を出た悠里は、要に家まで送ってもらい、彼の姿が見えなくなるまで見送った後、家の中に入る。

「ただいまー！！」

悠里は元気よくそう言って、玄関で靴を脱ぐ。

中間テストの点数は思っていたよりよかったし、久しぶりの部活の合奏は楽しかったし、大好きな要との放課後デートは楽しかった。

この前撮った要との写真を飾るフォトフレームとお揃いのアルバムも買えた。

フローラ・カフェ星ヶ浦駅前店で要に奢ってもらった『ネクタル』もすごくおいしくて、だから今、すごく嬉しい。

祖母と母親が帰宅した悠里に気づいて出迎えてくれた。

その後、手洗いとうがいを済ませた悠里は自室に行き、部屋着に着替えて通学鞄から学校で使うノートパソコンを取り出して充電する。

それから、要と一緒に買ったフォトフレームを机の上に立てかけた。

今からこのフォトフレームに飾る一枚を、この前プリントアウトした写真の中から選ぶのだ。

悠里が、迷いながら要とのツーショット写真の中から一枚を選び、フォトフレームに写真をおさめたところで晩ご飯ができたと祖母が部屋に呼びに来た。

祖母にフォトフレームと写真を褒められ、悠里は要にラッピングしたチョコチップクッキーを渡して喜んでもらえたことを伝える。

そしてダイニングで父親以外の家族全員で晩ご飯を食べ終えた悠里は食器を洗い終えた後に自室に行き、要とのツーショット写真をおさめたフォトフレームをスマホで撮り、要に家まで送ってもらったお礼のメッセージと写真をおさめたフォトフレームの写真を送信した。

「残りの写真はアルバムに収納しようっ」

悠里はレイアウトを考えながら要と撮った写真をお揃いのアルバムにおさめる。

「最後の一枚、これでおしまいっ。うん、いい感じっ」

悠里はにこにこしながら写真をおさめたアルバムを見返し、満足したのでアルバムを本棚にしまう。

宝物がまた一つ増えた。

その後、悠里は洗面所で歯を磨いた後、お風呂に入り、髪を乾かして自室に向かう。

さあ、楽しいゲームの時間の始まりだ。