第六百八十六話 高橋悠里は『転送の間』でフレンドからのメッセージを確認した後ログアウトして真子にメッセージを送信する



気がつくと悠里は『転送の間』にいた。

問題なくリープできたようだ。

サポートAIとのやり取りを終え、悠里はステータス画面を出現させて口を開いた。


「さっき、フレンドからメッセージ来てたんだよね。アーシャさんからかもしれないけど……。クレムからのメッセージだ」


悠里はクレムからのメッセージを表示させた。





マリー、オレ今ログインした!!

奢ってくれる約束、まだ有効?





「あー。クレムに奢る約束してたんだよね。でも今日、真珠はフローラ・カフェでスイーツ食べまくったから、もう一回いっぱい食べたら食べすぎだよねえ……」


真珠はテイムモンスターなので食べすぎてもお腹が痛くなることはないけれど、でも、真珠が大食いテイムモンスターになってしまったら、食費がかさんで貧乏になってしまう……!!

マリーは少し迷った末に、今は、クレムからのメッセージをスルーすることにした。


「ごめん、クレム。メッセージ、今は返信しないでおくね。あー。今日はもうゲームできないな。メッセージ返さないのに、ゲーム内でクレムに会ったら気まずい……」


悠里はそう結論を出して、サポートAIに挨拶をした後にログアウトした。


『アルカディアオンライン』をログアウトした悠里は自室のベッドの上で目覚め、それから横たわっていたベッドから起き上がり、ヘッドギアを外して電源を切る。

それからゲーム機の電源を切った。

ゲーム機器を充電した後に伸びをして、強制ログアウトしたアーシャの中の人の真子にメッセージを送ろうと思い立つ。


「真子さんに『眠ってしまったアーシャさんはジャックさんにお姫様抱っこされてましたよ』って教えてあげたいっ。イケメンにお姫様抱っこしてもらうのは乙女ゲームプレイヤーの夢だしっ」


悠里と真子は女主人公が美形男性キャラとの恋愛を楽しむ『乙女ゲーム』が大好きな女性プレイヤーで、リアルで顔を合わせた時には乙女ゲームの話で盛り上がった。


『乙女ゲーム』には高確率で、女主人公が怪我をしたりふらついて倒れたりするシーンがあり、そこで美形男性キャラが『軽々と』女主人公を抱き上げて『颯爽と』保健室か女主人公の自室等に運んでいくイベントが発生する。


乙女ゲームの恋愛対象キャラとして乙女ゲームプレイヤーに認められるには、美しい顔、均整の取れたスタイルが必須で、ハイスペックな能力には女主人公(推定40キロ~52キロ)程度の重さを軽々と抱き上げて、一定の距離を歩き、そっと女主人公をベッドに下ろすという、腕の筋肉を鍛えていなければとてもこなせないイベントを遂行しばければならない。


だが、一部の乙女ゲームプレイヤー以外からは筋肉ムキムキの太すぎる腕の男性キャラは敬遠される傾向にあるので、細マッチョ美形が乙女ゲームの恋愛対象男性キャラの標準仕様だ。


乙女ゲームが大好きな悠里は、アーシャを抱き上げて歩くNPC美形男性のジャックを見て感激した。

リアル……ではないけれど……生でお姫様抱っこを見られたのはとても嬉しい。


悠里の主人公のマリーは幼女なので、普通の抱っこはしてもらえるけれど、やはり、美形男性キャラが妙齢の女性を抱き上げているのを見るのはテンションが上がる。


お姫様抱っこイベントは、イベントが発生すると乙女ゲームによっては『友好度が上がる』場合があるので『アルカディアオンライン』でも『友好度が上がる』仕様だったらいいなと悠里は思う。


スマホを手にした悠里は真子へのメッセージを書き始めた。





真子さん。眠ってしまったアーシャさんはジャックさんにお姫様抱っこされてましたよ。

たぶん、アーシャさんが目覚めた時には錬金術師ギルドにいると思います。

私と真珠はおうちに帰ってログアウトしました。

生でお姫様抱っこを見て、私、テンション上がりました!!





悠里は真子へのメッセージを書き終えて送信した。


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