アルカディアオンライン【高橋悠里 中学一年生・一学期終了編】
第六百八十五話 マリー・エドワーズたちは錬金術師ギルドのギルドマスターと情報屋の『ルーム』で情報の売買をした後『銀のうさぎ亭』に帰り、リープする
第六百八十五話 マリー・エドワーズたちは錬金術師ギルドのギルドマスターと情報屋の『ルーム』で情報の売買をした後『銀のうさぎ亭』に帰り、リープする
マリーと真珠がスイーツを食べたり、飲み物を飲んだりした後に手鏡を見て遊んでいると、マリーだけに聞こえる可愛らしいハープの音が鳴った。
フレンドからのメッセージが来たようだ。
マリーがフレンドからのメッセージを確認しようしたその時、アーシャがマリーと真珠を呼ぶ声がした。
「わーわぅ!! わっう!!」
真珠が椅子から飛び下りて、フローラ・カフェのカウンター前にいるアーシャと錬金術師ギルドのギルドマスターのジャックのところに駆けていく。
『アルカディアオンライン』のフローラ・カフェは食べた物やトレイ、ゴミを片づけなくても構わない。
ゲーム万歳。でもリアルのフローラ・カフェでは片づけは必須だ。
マリーはメッセージの確認を後回しにして、テーブルの上に置いたトレイ等をそのままに、真珠の後を追う。
アーシャがカウンターで手続きを終えてくれていたので、情報屋の『ルーム』に続く階段が現れていて、真珠は颯爽と一番先に階段に乗り、皆が階段に乗ったことを確認して意気揚々と『下りON!!』と吠えた。
初めて動く階段に乗ったジャックは珍しそうに階段を見て『鑑定』を使っている。
「ジャックさんは錬金術師なのに『鑑定』が使えるんですね。すごい」
「だよねっ。ウチもそう思うっ」
マリーの言葉にアーシャが乗っかる。真珠も二度肯いた。
ジャックはマリーとアーシャ、真珠に視線を向けて微笑み、口を開く。
「俺の祖母も錬金術師で『錬金術師として大成するには鑑定スキルが必須だ』って言われて、6歳の時にコネとかいろいろ全部使って鑑定師ギルドにねじ込まれたんだよ。それまでの詰め込み教育で『識別』スキルを取ったら即座に鑑定師ギルド行きだった時は絶望した」
「それは……大変だったんだね……」
「くぅん?」
「ウチが好きになる人って皆『鑑定』スキル持ち……? 違うな。情報屋さんのことは全然好きじゃないし、ときめかない」
マリーがジャックの過去話に同情し、真珠は話がよくわからずに首を傾げ、アーシャは小声でぶつぶつと呟いた。
動く階段が階下に下りきり、とマリーたちは動く階段を下りた。
マリーは、正面の壁にある扉を開け、中に入る。
真珠とアーシャ、ジャックはマリーの後に続いた。
情報屋のクラシックな書斎風『ルーム』に入ると、ジャックは興味深げに周囲を見回して『鑑定』スキルを使い、部屋の主であるデヴィット・ミラーは目を細めてひそかに『隠蔽』スキルを発動させた。
そして、デヴィット……情報屋は、にこやかに客人たちを迎える。
「ようこそ、私の『ルーム』へ。まずはお掛けください」
情報屋はそう言いながら、皮張りのソファーに座った。
マリーはいつも座る、情報屋の正面のソファーではなく、情報屋の隣に座った。
真珠はマリーの膝に飛び乗る。
真珠を膝に乗せたマリーはアーシャとジャックに視線を向け、自分の正面のソファーを手のひらを仰向けにして、指し示す。
「アーシャさんとジャックさんはあっちのソファーにどうぞっ。いいですよね? 情報屋さん」
「ええ、もちろん。どうぞお掛けください」
ジャックはすすめられたソファーに座り、アーシャは小さくガッツポーズをしてジャックの隣に座った。
マリーはアーシャとジャックを隣同士で座らせることに成功して、ミッション達成とひそかな達成感を味わった。
真珠は、真珠の正面に座ったアーシャとジャックを嬉しそうに見つめている。
アーシャはマリーに視線を向けて口を開いた。
「マリーちゃん。情報屋さんに情報、売るんだよね?」
「アーシャさん。その前に私とそちらの方の自己紹介をさせてください」
ジャックと隣同士に座らせてくれたマリーの役に立とうとしていたアーシャを、情報屋が苦笑して窘める。
そして情報屋とジャックが互いに自己紹介をした後、情報屋は隣に座っているマリーに視線を向け、口を開いた。
「マリーさん。売りたい情報とはなんでしょう?」
「えっと、私、さっき錬金術師ギルドのスキル判定オーブを触ったんですけど、その時にスキルオーブが紫色に光ったんですっ」
「紫色ですか。確か、錬金術師ギルドのスキル判定オーブは青色に光るか光らないかだったはずですが」
マリーの言葉を聞いた情報屋は、錬金術師ギルドのギルドマスターであるジャックに視線を向けて問いかける。
ジャックは情報屋の視線を受けて口を開いた。
「今、公開している情報は『錬金』スキルと『魔力操作』スキルがある者がスキル判定オーブに触れると青色に光るというものだ。だが」
「ジャックさん、ストップ!! その情報はマリーちゃんが情報屋さんに売るやつなのでっ!!」
「そうだな。マリーは情報を売りたがっていたな」
ジャックの言葉をアーシャが止めた。
アーシャに目顔で促され、マリーは肯いて口を開く。
「えっと、私が持っているスキルが紫色の光に関係あるみたいで。そのスキルが何かっていう、スキル判定オーブが紫色の光を発する条件に関しては、来月の『光月』1日に公開しようと計画されていると聞きましたっ。えっと情報公開後は、『ギルド登録料無料』ではなく『紫色の光を発した者はギルド登録料減額の金貨8枚』に変更になりますっ」
「つまり、今、紫色の光を発することができたら錬金術師ギルドの登録料、金貨10枚が無料になるということですね?」
「はいっ。そうですっ」
「マリーさんの現在のステータスとスキルを鑑定させて頂けますか?」
「対価をいただけるのであれば、喜んでっ」
「マリー、いいのか? 『鑑定』されるんだぞ」
お金のために自分の情報を売るという決断に錬金術師ギルドのギルドマスターのジャックは驚いた。
マリーはジャックに笑顔を向けて肯く。
「私、今まで何度も情報屋さんに『鑑定』されてるのでオッケーですっ」
「聖人というのは、測りがたい存在だな……」
NPCのジャックは、自分以外の誰かに、自分のステータス値や所持スキルを公開するなど、とんでもない不利益だと考える。
だがプレイヤーのマリーは、基本的にPK等の心配をすることがない『アルカディアオンライン』のゲームの仕様と情報屋の『情報を取り扱う姿勢』を信じているので『鑑定』されても全く怖くなかった。
マリーは情報屋に鑑定をされ、これまでの情報も含めた対価として金貨5枚を入手した。
その後、アーシャが強制ログアウトをしたので、彼女を抱き上げて錬金術師ギルドに連れて帰ってほしいとジャックにゴリ押ししたマリーは、ジャックにアーシャを抱き上げさせ、それから、マリーたちは情報屋に挨拶をして、彼のルームを後にした。
そして、マリーと真珠はアーシャを抱き上げたジャックと別れて『銀のうさぎ亭』に帰り、マリーはベッドのある部屋でリープした。
***
マリー・エドワーズが情報を売って受け取った対価 金貨 5枚
マリー・エドワーズの現在の所持金 3684301リズ → 4184301リズ
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