第六百八十一話 マリー・エドワーズは『錬金術師ギルドのギルドマスター』ジャック・ヴァンスと話し、アーシャはジャックに恋をする



部屋の主はソファーに座ったマリーとアーシャ、マリーに抱っこされた真珠に視線を向けて微笑み、口を開く。


「俺の名はジャック・ヴァンス。以前は錬金術師ギルドの副ギルドマスターを拝命していたが、前任のクソ錬金術師ギルドのギルドマスターに解任され、その後、クソ錬金術師ギルドのギルドマスターが『事故死』したので、その後任で錬金術師ギルドのギルドマスターに就任した。錬金術師ギルドのギルドランクはSだ」


「Sランク!! すごい!!」


「くぅん?」


「美形で有能。Sランクの錬金術師ギルドのギルドマスターって……それってフレデリック様超えってことじゃない……?」


マリーはジャックの『Sランク』という言葉に感動し、真珠は『えすらんく』の意味がよくわからずに首を傾げ、アーシャはジャックを恋愛対象としてロックオンした。

そしてマリーは本当に彼の名が『ジャック・ヴァンス』なのか気になって、抱っこしている真珠に視線を向けて口を開いた。


「ねえ、真珠。このお兄さん、真珠にも『ジャック・ヴァンス』って言ってた?」


マリーは抱っこしている真珠に視線を向けて尋ねる。

真珠はマリーに肯き、口を開く。


「わっう、わんう。わんっ」


確かにこの綺麗な人は、真珠に『ジャック・ヴァンス』と言っていた。

真珠はちゃんと覚えている。

ジャックは真珠に微笑んで口を開いた。


「真珠は賢いな。俺の名を覚えていてくれてありがとう」


「わんっ」


真珠はジャックに賢いと言われて嬉しくなって、尻尾を振る。

マリーは大好きなテイムモンスターの真珠を褒められてドヤ顔になった。

アーシャはジャックに自分の名前を欲しくて、熱量を込めてジャックを見つめる。

ジャックはアーシャの熱い視線に気づいて苦笑し、口を開いた。


「マリーの隣に座っている、そちらの可愛らしいお嬢さん。名を尋ねてもよろしいですか?」


「はいっ。ウチの名前はアーシャですっ。孤児なので名字はありません。錬金術師ランクは、登録したばかりなのでGですけど、でもこれから頑張りますっ」


「期待してるよ。アーシャ」


「はい……っ!!」


ジャックに名前を呼ばれ、笑顔を向けられてアーシャは舞い上がっている。

マリーは新たな美形NPCジャックの登場で、アーシャがすっかり元気になったことにマリーはほっとした。

真珠はアーシャを見てにこにこしているマリーを見つめて嬉しくなる。


「あっ、そうだ。私、聞きたいことがあって。なんで私がスキル判定オーブに触れたら紫色に光ったんですか?」


マリーが尋ねると、真珠とアーシャも期待を込めてジャックを見つめる。

マリーと真珠、アーシャの視線を受けてジャックは口を開いた。


「スキル判定オーブが紫色の光を発する条件に関しては、来月の『光月』1日に公開しようと計画している。条件の公開後は現行法の『ギルド登録料無料』ではなく『紫色の光を発した者はギルド登録料減額の金貨8枚』に変更する予定だ。マリーは運がよかったな」


「えっと、その情報って売ってもいいですか? 『錬金術師ギルドのスキル判定オーブが紫色の光を発する条件に関しては、来月の『光月』1日に公開する』っていう」


マリーは欲をかいて言い出す。

マリーの言葉を聞いたジャックは眉をひそめて口を開いた。


「売る? 情報を?」


「はい。ダメですか? ダメだったら諦めます」


錬金術師ギルドの登録料金貨10枚を節約できただけでもありがたいのだと思いながらマリーが言うと、ジャックは少し考えて口を開く。


「マリーの情報を買う者がいるということだな。その者は聖人か?」


「はい。私と真珠とアーシャさんの友達です」


マリーは肯き、そう言う。

ジャックはマリーに真剣なまなざしを向けて口を開いた。


「情報を売っても構わない。だが、条件がある」


「えっ? えっと、じゃあ情報は売らなくても」


「条件ってなんですか!?」


面倒くさい事案になりそうな気配を感じて引こうとするマリーの言葉を遮り、アーシャが食い気味にジャックに問いかける。

アーシャの目は、完全に恋する乙女の目になっていた。


***


風月21日 昼(3時25分)=5月23日 19:25



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