第五百九十一話 マリー・エドワーズと真珠が死に戻った後、イヴはマリーからのメッセージを読み、マリーと真珠を迎えに行く



イヴは混乱していた。


大好きな恋人、ウェインやウェインのフレンドたちとパーティーを組んで臨んだワールドクエスト『ヘヴン島の女王 ヘヴン島の覇権をめぐる攻防』だったけれど、青龍のブレス攻撃でHPが0になり、回復も間に合わず、早々に港町アヴィラの教会に死に戻ることになってしまった。


『転送の間』に設置されているヘヴン島の港への転送魔方陣が使用できるのは一度だけなので、死に戻ってしまうとヘヴン島への移動手段が無い。


ウェインと離れ離れになってしまった悲しみとワールドクエスト『ヘヴン島の女王 ヘヴン島の覇権をめぐる攻防』から締め出されてしまった苛立ちを抱えながら港町アヴィラの教会から出ると『アルカディアオンライン』で友達になったマリーと真珠がいたので、嬉しくて駆け寄り、親愛の感情を込めてマリーの背中を叩いたのだ。


嬉しくなったり気持ちが昂ると、相手の背中や肩を強く叩いてしまうのはイヴの中の人であるすずの癖で、そのことでいつも親友の真子から『痛い』と怒られているのだけれど『アルカディアオンライン』は痛覚設定が0パーセントなので、マリーは痛くなかったはずだ。


「本当に、マリーはなんで死んじゃったの……?」


マリーと真珠に会えて嬉しくて、イヴがマリーの背中を思いっきり叩いた直後、マリーと真珠は光に包まれて消えてしまった。

なぜマリーと真珠が死んでしまったのか、考えても答えが出ずにイヴはため息を吐く。


「とにかく、マリーと真珠を迎えに行こう」


教会の入り口から復活の魔方陣がある部屋までは数分でたどり着ける。

イヴが教会の中に足を踏み入れようとしたその時、フレンドからのメッセージが来たことを知らせる着信音が鳴った。

イヴはハンドベルのような音を着信音にしている。


「ウェインからのメッセージかな……? ステータス」


イヴはステータス画面を出現させてフレンドからのメッセージを確認した。

メッセージの送り主はウェインではなく、さっき死に戻ったマリーだった。


「マリーからのメッセージ、なんだろう?」


復活の魔方陣の部屋から教会前まで歩いて数分なのに、どうしてわざわざフレンド機能でメッセージを送ってきたのだろう?

イヴはマリーの意図が掴めずに、メッセージに目を通す。

マリーからのメッセージを読み終えたイヴは、天を仰いで口を開いた。


「死に戻っても回復しない『最大HP値1』ってなに? 呪い……?」


マリーはいったい何をやらかしてデメリットスキル『大泣き』を付与されてしまったのだろうか。

まさか自分からデメリットスキルを取得しにいったとかは無いよね……?


「とにかくマリーと真珠を迎えに行こう。マリーが転んだりしたら、また死に戻っちゃうかも……っ」


イヴはそう呟いて、小走りで死に戻ったマリーと真珠を迎えに、礼拝堂の奥の復活の魔方陣がある部屋に向かった。


***


風月14日 朝(2時49分)=5月22日 0:49

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