第五百八十七話 マリー・エドワーズはノーマとロビーの仲裁に失敗した後、ノーマや真珠とノーマの家に向かう
「えぐっ、ひっく、どーばさん、私、重いから……下ろして……」
華奢なノーマに抱っこしてもらうのが申し訳なくてマリーは言った。
ノーマはマリーの意志を尊重して、マリーをそっと地面に下ろした。
「わうー。くぅん……」
真珠はマリーの足元にすり寄り、心配そうにマリーを見上げる。
「じんじゅ……っ」
ぐずぐずと鼻を鳴らしながら、マリーは真珠を抱き上げて抱きしめた。
心配そうな顔でマリーを見ていたノーマはロビーに剣呑な視線を向けて口を開く。
「ロビー。マリーちゃんに何を言ったの……っ!?」
ノーマに詰問されたロビーは、自分とマリーの会話を振り返るが、特にマリーを泣かせるようなことは言っていない。
「別に、ただ話をしただけだよ。そうしたら、その幼女が突然大泣きを始めたんだ。泣きたいのはこっちの方だぜ」
ロビーの言葉を聞いたノーマは悲しげに顔を歪め、ロビーから目を逸らした。
ロビーはノーマを見つめて口を開く。
「ノーマ。俺は……」
「私に話しかけないで、ロビー。あなたは本当に変わってしまった。私の知っているロビーなら、幼い女の子が泣いていたらおろおろしながらも、必死で慰めようとしていたはずよ」
ノーマの言葉にイラついたロビーは顔を歪めて口を開く。
「以前の弱い、かっこ悪い俺と今の俺を比べるのはやめろよ。ノーマ……!!」
「やめて!! 喧嘩しないで!! 泣いてごめんなさい……!!」
にらみ合うノーマとロビーの間に割って入ったマリーは、真珠をぎゅっと抱きしめながら頭を下げた。
「マリーちゃん……」
「……俺は謝らないからな」
痛ましげにマリーを見つめるノーマと、マリーから顔を背けて言うロビーは、真珠の目には正反対のふたりに見えた。
ロビーは乱暴な足取りで去り、後に残ったのは涙と鼻水で汚れた顔になったマリーと、マリーに抱っこされた真珠、そして立ち尽くすノーマだった。
ノーマはスカートのポケットからハンカチを取り出してマリーの顔を拭きながら口を開く。
「マリーちゃん。ごめんね。私がロビーと話して欲しいって言ったから、マリーちゃんを悲しませて、泣かせることになっちゃった……」
ノーマに涙と鼻水で汚れた顔を綺麗にしてもらったマリーは首を横に振り『クリーン』を発動させてノーマのハンカチを綺麗にした。
「私、ロビーさんにわかってもらえなかった。私は聖人なのに、同じ聖人のロビーさんに言葉が届かなかった。ノーマさんがすごく悲しんでいて、困っているってきちんと伝え切れなかった。だから、自分がすごくダメな子だって思えて、ノーマさんの友達なのに、ノーマさんの役に立てなくて悲しくて、それで泣いちゃったの……」
「わうー。きゅうん……」
ノーマは項垂れるマリーと、マリーを心配そうに見つめる真珠の頭を優しく撫でて微笑む。
「マリーちゃん。シンジュくん。お腹空いたでしょ? 一緒に朝ご飯を食べよう。マリーちゃんがこの前、ラブリーチェリーをたくさんのお金で買い取ってくれたから、花の町カーヴァーから来た商人から蜂蜜をたくさん買えたの。それで、最近の朝ご飯はいつも蜂蜜をかけたフレンチトーストなのよ」
「蜂蜜をかけたフレンチトースト……!!」
「わうわう……!!」
マリーは『銀のうさぎ亭』のメシマズ事情を解決するためにフレンチトーストを作ろうとして材料が足りず、挫折したことを思い出しながら目を輝かせ、そして真珠は『蜂蜜』という言葉に反応して嬉しくなってはしゃぐ。
真珠は蜂蜜飴の甘さ、おいしさを知っているのだ……!!
真珠はわくわくが止まらなくて、マリーの腕の中から元気よく飛び下りた。
ノーマは地面に降り立ち、耳をぴんと立てて尻尾を振る真珠の頭を撫でた後、マリーと手を繋いで自分の家へと歩き出す。
真珠も尻尾を振りながら、マリーの隣を歩いた。
***
マリー・エドワーズのスキル経験値が上昇
クリーン レベル1(20/100) → クリーン レベル1(30/100)
風月14日 朝(2時07分)=5月22日 0:07
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます