アルカディアオンライン【高橋悠里 中学一年生・一学期終了編】
第五百七十六話 マリー・エドワーズと真珠は列に並びながら、クレムが彼の固有クエストを確認するのを見守った後、霧の穴を這い進んで『孤王の領域』に到達する
第五百七十六話 マリー・エドワーズと真珠は列に並びながら、クレムが彼の固有クエストを確認するのを見守った後、霧の穴を這い進んで『孤王の領域』に到達する
霧の穴を通り抜けるための順番を待っている間、真珠を抱っこしているクレムとお喋りをしていたマリーは、クレムの父親が経営している『歌うたいの竪琴』で食べた山盛りのコッコのから揚げがすごくおいしかったと話した。
マリーの言葉に、真珠も何度も首を縦に振る。
マリーは自分の家でもある『銀のうさぎ亭』で出される料理が薄味なのに、なぜ『歌うたいの竪琴』で食べた山盛りのコッコのから揚げは塩がほどよく効いていたのか気になった。
固有クエスト『塩を安価に、庶民の手に!!』が発生したから、余計に気になるのかもしれない。
「クレム。なんで『歌うたいの竪琴』のコッコのから揚げは塩味の鳥のから揚げみたいでおいしいの?」
「さあ。オレ……というか、オレが憑依する前のクレムは料理とか興味無かったからなあ。でも、クレムの記憶では、昔は薄味の飯だったっぽい」
「そうなの? 『歌うたいの竪琴』もメシマズだったの?」
「クレムは薄味? の料理でも『そんなもんだ』と思って食べてたみたいだけど、母親が死んだ直後から飯が旨くなって……。あっ。今、オレ固有クエスト発生した。確認していい?」
「うん。いいよっ」
「わんっ」
クレムに問われたマリーと真珠は肯く。
「サンキュ」
クレムは真珠を片腕に抱きながらステータス画面を出現させて、発生した固有クエストを確認する。
マリーと真珠には、クレムが虚空を凝視しているようにしか見えない。
列が前に進んだので、マリーは虚空を凝視して固有クエストを確認しているクレムの手を引いて歩く。
空気を読んだ真珠はクレムの腕から身軽に飛び下りた。
「確認終了。クローズ」
ステータス画面を消したクレムは自分の手を引いて歩くマリーと、足元を歩く真珠に笑顔を向け、口を開く。
「マリー。真珠。サンキュ。オレの固有クエストの話、聞く?」
「いいの?」
「くぅん?」
マリーと真珠が首を傾げたその時、霧の穴をくぐる順番が回ってきた。
「とりあえず霧の穴を通り抜けようか。オレ、真珠、マリーの順番で四つん這いになって行こうぜ」
「わんっ」
「了解っ」
クレムと真珠、マリーが四つん這いになり……真珠はいつも通りのスタイルだが……霧の穴に這い進む。
高速ハイハイで進むこと10秒。白い霧に覆われていたクレムの視界が明るく開けた。
無事に『孤王の領域』に着いたようだ。
クレムに続いて真珠、マリーが姿を現す。
マリーはパーティーメンバーが全員、無事に霧を抜けられてほっとして、真珠とクレムに笑いかける。
クレムはマリーに視線を向けて口を開いた。
「話すより先に、ゴミ回収するか。マリーは風呂入らなくちゃいけないもんな」
クレムは腰に両手をあてて『孤王の領域』に捨てられているガラスの破片や瓶の蓋、刀身が折れた剣や穂先がない槍などを見やって言う。
マリーは相変わらず汚い場所だと思ったが、以前見た時よりもさらにゴミの数が減っているように感じた。
プレイヤーがゴミ……ではなく素材を回収しまくれば、きっとレイドボスバトル以前の綺麗なフィールドに戻るのだろう。
「じゃあ、ここからはそれぞれにゴミ拾いしよう」
クレムの言葉にマリーと真珠は肯き、それぞれにゴミ拾いを始めた。
***
マリー・エドワーズのスキル経験値が上昇
掃除 レベル1( 35/100)→ 掃除 レベル1( 40/100)
風月13日 夕方(4時59分)=5月21日 20:59
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