第五百七十一話 マリー・エドワーズと真珠は教会でクレムと合流し、パーティーを組んで中級魔力回復薬を貰う



教会の復活の魔方陣の上に立ち、マリーは首を傾げて口を開いた。


「クレムとの待ち合わせ、教会の入り口でいいかなあ?」


「くぅん?」


「フローラ・カフェで待ち合わせすればよかったかな?」


「ぎゃわんっ!!」


マリーの言葉を聞いた真珠はショックを受けて涙目になる。

真珠はフローラ・カフェで甘くておいしいスイーツを三つ食べながら、大好きなクレムを待っていたかった……!!

今からでも遅くはない。

真珠が涙目でマリーを見つめてフローラ・カフェに行こうと訴えようとしたその時、青色のローブを着た少年が手を振りながら駆けて来た。


息を切らしながらマリーと真珠の前に立ったのは、マリーと真珠が待ち合わせをしていたフレンドのクレム・クレムソンだ。

クレムはマリーに明るく笑いかけ、真珠の頭を撫でた。彼の口元には八重歯が覗いている。


クレムは錬金術師ギルドの一室で目覚め、それからマリーにメッセージを送り、マリーからの返信を読んで教会に死に戻った。

復活の魔方陣がある部屋ですぐにマリーと真珠に会えてラッキーだと思いながら、クレムは口を開いた。


「マリー。メッセージ、サンキュ。真珠、ここで会えて嬉しいぜっ。ん? 真珠、涙目になってる?」


クレムは真珠の顔を覗き込み、首を傾げた。

真珠はクレムに会えて嬉しいので、今、スイーツを食べられなくても我慢しようと決め、涙を乾かすために高速で瞬く。

マリーは高速で瞬く真珠の顔を見て、真珠は目が痛くなったのかと心配しながら口を開いた。


「真珠。目が痛いの? 目が痛いなら、ロ……じゃなくて、私、死に戻りする?」


プレイヤーが死に戻りかログアウトをすれば、プレイヤーとテイムモンスターの状態異常はすべて解消される。

今、ちょうどマリーたちは教会の復活の魔方陣の上にいるので、クレムを長くは待たせずに死に戻れるだろう。


真珠は目が痛いわけではなく、ただ涙を乾かしたくて瞬きをしているだけなので、マリーの言葉に首を横に振る。

真珠は『死に戻り』しなくてもいい。


「真珠、目は痛くないのか? どこも痛いところ、無いか?」


マリーに続いてクレムが真珠に、心配そうに尋ねる。

真珠は首を縦に振った。

真珠がどこも痛くないとわかって、マリーとクレムは安心して微笑む。


「じゃあ、マリー。オレとパーティー組もうぜ。前みたいにオレがパーティーリーダーでいい?」


「いいよ。真珠もクレムがパーティーリーダーでいいよね?」


「わんっ」


マリーの言葉に真珠も肯く。

クレムはマリーと真珠に微笑み、口を開いた。


「今、マリーにパーティー申請するから。ステータス」


クレムがステータス画面を操作すると、マリーの目の前に画面が現れた。





プレイヤーNO198047クレム・クレムソンからパーティー申請されました。

受領しますか?



       はい / いいえ





マリーは『はい』をタップした。

新しい画面が現れる。





プレイヤーNO178549マリー・エドワーズはプレイヤーNO198047クレム・クレムソンのパーティーに入りました。

パーティーメンバーの人数で、パーティーメンバーが討伐したモンスターの経験値が等分されます。

パーティーから離脱する場合は『フレンド機能』の『パーティー管理』をご利用ください。





マリーは目の前に表示された文章を読み、口を開く。


「クレム。私、パーティーに入れたみたい。真珠も一緒にパーティーに入ってるよね?」


「今、パーティーリストを見てみる。……うん。ちゃんと真珠も入ってるよ」


「よかった。真珠も一緒だよ。戦闘……私はまだ頑張れないけど……」


「わうー。くぅん……」


真珠は項垂れてしまったマリーを心配そうに見つめる。

クレムはマリーを見つめて口を開いた。


「マリーはまだ武器を買ってないのか?」


「買ってない。でも、今の私にはAGI値がすごく上がる『疾風のブーツ』と姿を消すことができるスキル『エリア・インビジブル』があるからモンスターに遭遇しても逃げ切れると思うのっ」


「わんっ」


マリーの言葉に真珠も力強く肯く。


「逃げ特化か。それもいいな。マリーは魔力回復薬は持ってんの?」


「飲みかけの初級魔力回復薬があるはず。たぶん」


クレムに問いかけられたマリーはアイテムボックスのリストを確認して、飲みかけの初級魔力回復薬があることを確かめた。


「飲みかけの初級魔力回復薬しか無いなら『エリア・インビジブル』を使うには足りないっぽいから、オレが持ってる中級魔力回復薬をやるよ。オレが錬金して作った錬金回復アイテムだから、薬師ギルドで売ってる中級魔力回復薬よりレアで回復量も多いはずだぜ」


クレムはそう言いながらアイテムボックスから中級魔力回復薬をひとつ取り出してマリーに手渡す。

マリーはクレムから中級魔力回復薬を受け取って口を開いた。


「ありがとう。クレム。無料で貰っちゃっていいの?」


「いいよ。その代わり『エリア・インビジブル』をかける時は真珠だけじゃなくてオレのことも入れてくれよな」


「了解ですっ」


マリーはクレムに笑顔で言って、貰った中級魔力回復薬をアイテムボックスに収納した。


***


風月13日 昼(3時52分)=5月21日 19:52



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