第五百七十話 マリー・エドワーズと真珠は上に向かう動く階段に乗り、雑談をした後にクレムからのメッセージを受け取る



情報屋の『ルーム』を出たマリーと真珠は真珠の吠え声で動く階段が上へと動き出す。


「真珠。フローラ・カフェで何か甘い物、食べて行く?」


「わおんっ!! わんわんっ!!」


マリーの提案に真珠は目を輝かせ、尻尾を振って肯いた。


「私はこの前アイテムボックスに収納したカフェラテを飲もう。フローラ・カフェで買ったものだから店内で飲んでもいいよね」


真珠は何を食べようかと思いを巡らせる。

チョコチップクッキーがいいだろうか。それともバナナマフィン?

ミルクレープも甘くておいしい……!!


「でもバージルさんって美人な女の人に弱そうだったのに『モイラ・レッドモンド』に寝返らないなんて、不思議。なんでだろう?」


マリーは考えてみたが、答えは出ない。


「それにヘヴン島に青龍が出たってメッセージ来たけど、お祖母ちゃん、青龍を癒す固有クエストを達成できたのかなあ?」


「わうー。くぅん?」


真珠はマリーの祖母のことを話しているのかと思って首を傾げる。

真珠が不思議そうな顔をしていることに気づいたマリーは口を開いた。


「真珠。何か疑問? どのスイーツ食べたらいいか迷ってるとか? あっ。スイーツっていうのは甘くておいしい物のことだよ」


「……わんっ!!」


真珠はマリーの祖母のことを呟いていたのを疑問に思ったのだが、その前には甘くておいしいスイーツのことを考えていたので、少し迷って肯いた。


「真珠、好きなスイーツ食べていいからね。真珠はいつもいい子にしてるから、スイーツ三つ食べていいよ」


マリーは指を三本立てて言う。


「わんわぅ、わうわっうわっうー、わううわうん、わうわうーう、わうう!!」


三つのスイーツを食べていいと言われた真珠は食べたいスイーツを三つ叫んだ。

その直後、可愛らしいハープの音が鳴った。

フレンドからの返信が来たようだ。

マリーはフレンドからのメッセージを確認しながら口を開く。


「またバージルさんからの一斉送信メッセージかと思ったら、クレムからのメッセージだ」


「わうう!!」


マリーのフレンドの錬金術師の少年、クレムのことが大好きな真珠はクレムの名を呼び、はしゃいで尻尾を振った。

この前、マリーとクレムと一緒に食べたスイーツはすごくおいしかったと真珠は思い返す。

マリーはクレムからのメッセージを表示させて読み上げる。


「『今、マリーと真珠の万年筆を錬金する材料を集めに孤王の領域に行こうと思ってるんだけど、暇ならマリーと真珠も一緒に行かないか? 五分経っても返信がなければオレひとりで行くよ』だって。私と真珠の万年筆の材料を集めるのなら、私たちも手伝った方がいいのかも。真珠はどう思う?」


「うう……っ」


真珠は悩んだ!!

真珠はおいしいスイーツを三つ食べたい!!

でも、クレムが作ってくれるという万年筆も楽しみだ……。

クレムと遊ぶのも楽しい。


以前、真珠とマリーはクレムやイヴ、アーシャと一緒に西の森でモンスター討伐をしたことがあって、その時、真珠はすごくわくわくした。


「わうう、わうっ」


真珠はクレムと一緒に孤王の領域に行くことを決め、吠えた。


「クレムと一緒に『こおうのりょういき』に行く?」


「わんっ」


真珠の意志を確かめるマリーに、真珠は力強く肯く。


「わかった。じゃあ、クレムに『一緒に行く』って返信を送るね」


マリーはそう言いながら、クレムへのメッセージを書き始める。





クレム。私と真珠もクレムと一緒に『こおうのりょういき』に行くよ。

今、情報屋さんの『ルーム』を出て、動く階段に乗ってる。

教会で待ち合わせでいい?





マリーはメッセージを書き終えてクレムに送信し、そして真珠と一緒にフローラ・カフェ港町アヴィラ支店を後にした。



***


風月13日 昼(3時43分)=5月21日 19:43



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