第五百六十二話 マリー・エドワーズと情報屋はワールドクエスト『ヘヴン島の女王 ヘヴン島の覇権をめぐる攻防』に『モイラ・レッドモンド』という名前が記載されていると気づく



情報屋との話し合いを再開することになり、マリーはスロットマシーンと真珠の丸椅子をアイテムボックスに収納した。

そしてマリーと真珠、情報屋は皮張りのソファーに向かい合って座る。


「情報屋さん。スロットマシーンからちゃんとコインが出るようにしてくれてありがとうございましたっ」


「わうわううわううわうわっ」


マリーと真珠は揃って情報屋に頭を下げた。


「どういたしまして。他に、買いたい情報はありますか?」


「いいえっ。売りたい情報はありますっ。私、固有クエストが発生したのでその情報を売りたいですっ」


「それは興味深いですね。それとマリーさんが『エリア・インビジブル』を習得した時の状況を教えて頂けますか? 対価はお支払いします」


「『エリア・インビジブル』を習得した時の状況を教えるのはちょっと……」


「そうですか。無理強いするのはやめましょう」


情報屋はそう言った後、サポートAIの声が響いた。


「条件を満たしましたのでワールドクエスト『ヘヴン島の女王 ヘヴン島の覇権をめぐる攻防』が発生しました。クエストの受注条件は『クエスト発生時からクエスト終了時までに移動する島ヘルアンドヘヴンに滞在すること』です。クエスト受注の操作は必要ありません。


尚、特別措置として『転送の間』にヘヴン島の港への転送魔方陣をご用意しています。ヘヴン島の港への転送魔方陣が使用できるのは一度だけなのでご注意ください。プレイヤー各位はふるってご参加ください。


詳しくはステータス画面の『クエスト確認』をご確認いただくか、転送の間でサポートAIにお尋ねください」


「ワールドクエスト……!?」


マリーは新たなワールドクエストの発生に驚いて瞬く。


「ワールドクエスト『青龍襲来・ヘルアンドヘヴン存続の危機……!?』の関連クエストでしょうか。とりあえずクエスト内容を確認しましょう。ステータス」


情報屋はそう言ってステータス画面を出現させてワールドクエストの内容を確認する。


「わうー。くぅん?」


サポートAIの声を聞くことができないテイムモンスターの真珠は不安げにマリーを見つめる。


「そっか。真珠にはサポートAIさんの声が聞こえないんだよね。あのね。今、大事件!! みたいなことが起きたの。何が起きたか確認したら、真珠にも伝えるね」


「わん」


真珠はマリーの言葉に肯く。


「真珠は私がクエスト内容の確認をしている間、暇だよね。光るビー玉で遊んでてね」


マリーはアイテムボックスから光るビー玉を取り出して真珠の前に転がす。

真珠はおとなしくソファーの上で、ビー玉で遊びだす。


「真珠がひとりで遊べるおもちゃ、光るビー玉しかないのはつまんないよね。あっ。鏡ならソファーの上に置いて見れるかもっ」


マリーはそう思いついて、レーン卿の母親から貰った手鏡をアイテムボックスから取り出して、ソファーの上に置いた。

手鏡で自分の姿を見るのが好きな真珠は手鏡を覗き込み、目を輝かせる。

マリーは真珠が鏡を見て楽しんでいる姿を見て微笑み、それからステータス画面の『クエスト確認』をタップした。

新たな画面が表示される。





汎用クエスト  固有クエスト  ワールドクエスト【NEW】





マリーは『ワールドクエスト』の部分に触れた。

マリーの『ワールドクエスト』の一覧が表示され、その中から『ヘヴン島の女王 ヘヴン島の覇権をめぐる攻防』という名のワールドクエストを見つけてタップした。

新たな画面が表示される。





クエスト名 ヘヴン島の女王 ヘヴン島の覇権をめぐる攻防【NEW】【未受注】



ヘヴン島を作り上げた偉大な錬金術師であり魔術師でもあるモイラ・レッドモンドがヘヴン島でヘヴンズコインが尽きた人々を錬金アイテム『呪縛の鎖』で自らの配下にしていることが発覚した。


プレイヤーは『生命の水』を飲み、不老になった美女モイラ・レッドモンドに味方し、ヘヴン島の存続を望むのか、それともモイラ・レッドモンドに呪縛されて苦しむ人々を助ける道を選ぶのか……。





マリーはクエスト内容を読み、首を傾げる。


「モイラ・レッドモンドってなんか見たことある名前な気がする。誰だっけ……?」


「ワールドクエスト『青龍襲来・ヘルアンドヘヴン存続の危機……!?』のクエスト達成条件③にあった名前ですね」


ワールドクエスト『ヘヴン島の女王 ヘヴン島の覇権をめぐる攻防』のクエスト内容の確認を終え、情報を収集するためにフレンドへのメッセージを記載して送信しまくっている情報屋がマリーに答える。


「情報屋さん、すらすら答えが出てくるのすごい……。……お金、払わなくていいですよね?」


マリーは情報屋に情報提供の対価を要求されることに怯える。

真珠は鏡を見たり、光るビー玉を転がしたりしている。

情報屋はステータス画面から目を離さず、メッセージを記載する手を止めずに口を開いた。


「ええ。雑談ですから、対価は請求しません。マリーさんは面白い情報を提供してくれるお客様だから言いますが、モイラ・レッドモンドに敵対する場合はご注意ください。彼女は錬金武器『聖人殺しの短剣』を所持しているNPCの一人だという情報を得ています」


「『聖人殺しの短剣』って、プレイヤーキラーできる武器ですよねっ!? 怖い。無理……」


マリーは情報屋の言葉に怯え、そして今、大好きなユリエルが今まさにヘヴン島にいるのではないかと思い至った。


「どうしよう……!! ユリエル様、固有クエストを達成するために今、ヘヴン島にいるかも……っ!!」


マリーはパニックになりながら、ユリエルへのメッセージを書き始めた直後、サポートAIの声が響く。


「プレイヤーの身体に強い揺れを感知しました。強制ログアウトを実行します」


その言葉を聞いた直後、マリーの意識は暗転した。


***


風月13日 朝(2時02分)=5月21日 18:02



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