第五百六十一話 マリー・エドワーズはスロットマシーンにヘヴンズコインを補充して、情報屋がスロットに挑戦する
「マリーさん。このスロットマシーンは壊れているのですよね?」
情報屋に問いかけられたマリーは力強く肯く。
マリーに続いて真珠も肯いた。
「真珠が『王冠』を三つ揃えても、コインが1枚しか出ないんです……っ。前は『王冠』を三つ揃えたらものすごくたくさん、コインが出てきたんです……っ」
「わんっ」
マリーの言葉に真珠が肯く。
「その原因は、故障ではなさそうですよ」
情報屋はそう言って、スロットマシーンの背面に回って手をかざし『アンロック』を発動させた。
そして少し窪んだ取っ手に手を掛けてコイン補充口の蓋を開けた。
マリーと真珠は情報屋の側に歩み寄り、情報屋の動きを見守る。
「ここにコインを入れれば良いと思いますよ」
コイン補充口を見つめて情報屋が言う。
情報屋の『鑑定』結果ではスロットマシーンの状態は『正常』だった。
ただ『コインが補充されていない』と記載されていたのだ。
マリーは情報屋に肯き、アイテムボックスからヘヴンズコインをぎゅうぎゅうに詰めた皮袋を取り出した。
そして皮袋に入ったヘヴンズコインをコイン補充口に入れる。
真珠はコインがスロットマシーンに入れられていく様を目を輝かせて見つめる。
マリーがコインを入れ終えると情報屋はコイン補充口の蓋を閉め、皮袋を左腕の腕輪に触れさせてアイテムボックスにしまっているマリーに視線を向けて口を開いた。
「『ロック』を発動しますか?」
「私はまだ『アンロック』が使えないのでこのままでいいです。真珠、スロットマシーンで遊んでみる?」
「わんっ!!」
真珠はマリーの言葉に勢いよく肯き、尻尾を振った。
マリーはアイテムボックスから真珠の丸椅子を取り出してスロットマシーンの前に置く。
真珠は身軽に丸椅子に飛び乗り、スロットマシーンの丸いボタンに右の前足を置いてマリーに視線を向け、肯く。
マリーも真珠に肯きを返し、アイテムボックスからヘヴンズコイン1枚を取り出してコイン投入口に入れた。
スロットが回り出す。
ここからは真珠の独壇場だ!!
いつものように『王冠』を見極めて、鮮やかに三つ揃えて見せた。
スロットマシーンは『当たり』の音を立て、スロットマシーンのコイン受け取り口には音を立ててヘヴンズコインが流れ出る。
「コイン、出た……!!」
「わう……!!」
マリーと真珠は流れ出たコインを見て大喜びする。
情報屋は真珠が見事に『王冠』の絵を揃えたスロットを見ながら、口を開いた。
「面白そうですね。私も一回やらせてもらってもいいですか? 鑑定料金を無料にしますので」
「鑑定料金が無料!? めちゃくちゃお得!! 真珠、情報屋さんにもスロットマシーンで遊んでもらってもいい?」
「わんっ」
真珠は快く肯き、丸椅子から飛び下りた。
「情報屋さん。今、コインを集めてまたスロットマシーンに入れるからちょっと待ってね」
マリーは収納したばかりの皮袋をアイテムボックスから取り出し、コイン受け取り口に流れ出たヘヴンズコインを皮袋にぎゅうぎゅうに詰めて、スロットマシーンの背面に回って少し窪んだ取っ手に手を掛けて、少しもたつきながらもコイン補充口の蓋を開けた。
そして皮袋に入ったヘヴンズコインをコイン補充口に入れ、コイン補充口の蓋を閉めた。
情報屋は真珠の丸椅子に座ってスロットマシーンと向き合い、真珠は先輩ギャンブラーとして情報屋を見守る。
マリーはアイテムボックスからヘヴンズコインを1枚取り出して、情報屋に差し出した。
「ありがとうございます。マリーさん」
情報屋はマリーからヘヴンズコインを受け取り、コイン投入口に入れた。
スロットが回り出す。
情報屋はスロットマシーンの丸いボタンに右手を置いて、回るスロットを見つめながら『鑑定』を発動させた。
だが、スロット攻略に関する有力な情報は表示されず、情報屋はため息を吐く。
勘に頼るしか無いようだ。
情報屋が一度、スロットマシーンの丸いボタンを押すと『盾』が出た。
「『盾』だ!!」
「わおんっ!!」
マリーと真珠はわくわくしながらスロットを見つめる。
情報屋は再度、スロットマシーンの丸いボタンを押した。
真ん中のスロットが止まり『王冠』が出た。
「わうわん、わうっ!!」
『王冠』好きの真珠ははしゃいだが、マリーは絵が揃わなくてがっかりした。
情報屋が適当に再度丸いボタンを押し、最後に出たのは『剣』だった。
見事なほどにスロットの絵が揃わなくて、情報屋は苦笑した。
「私はスロットのセンスが無いようです。真珠くんはすごいですね」
情報屋に褒められた真珠は嬉しくて耳をピンと立て、胸を張って尻尾を振った。
***
風月13日 早朝(1時51分)=5月21日 17:51
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