第五百六十話 マリー・エドワーズは情報屋に嘘を吐いてプレイヤー善行値が少し下がり、情報屋はスロットマシーンを鑑定して首を傾げる



「あの、私、買いたい情報がありますっ」


いつも情報屋に情報を売ることが多いマリーの意外な言葉を聞いて、情報屋は身構えた。

マリーは情報屋に『ピザのレシピが欲しい』という突拍子もない依頼をしたことがあるのだ。


「どのような情報ですか?」


情報屋が問いかけると、マリーは皮張りのソファーから立ち上がり、ソファー横の位置まで歩き、ステータス画面を出現させる。

真珠はソファーに座ったままマリーを見守る。

マリーはアイテムボックスから収納していたスロットマシーンを取り出した。

情報屋は僅かに目を見張り、一瞬の後に平静な表情に戻る。

スロットマシーンを取り出したマリーは情報屋に視線を向けて口を開く。


「このスロットマシーンを直す方法を教えて欲しいんですっ」


「わんわんっ」


マリーの言葉に真珠も肯く。

情報屋はスロットマシーンを見て、それからマリーに視線を向けて口を開いた。


「マリーさん。このスロットマシーンはどのようにして入手したのですか?」


情報屋はマリーが聞かれたくないことを聞いてきた!!

マリーは心に100のダメージを受けた……!!


「えっと……拾った? みたいな……?」


マリーは視線をさ迷わせながら嘘を吐いた。

真珠は挙動不審なマリーを心配そうに見つめる。

情報屋は気の毒そうな顔でマリーを見つめ、口を開く。


「マリーさん。プレイヤーである私に『嘘の情報』を伝えるとマリーさんのプレイヤー善行値が下がりますよ」


「ごめんなさい!! 私、嘘を吐きました!! スロットマシーンはヘヴン島のヘヴンズカジノで盗みました!! 出来心で左腕の腕輪をスロットマシーンに触れさせたらアイテムボックスに収納できちゃって!! 青龍の攻撃でカジノが崩落したらスロットマシーンが壊れちゃうかもしれないし、どうせ壊れるなら私が貰っちゃおうかなって思って!! 真珠も楽しそうにスロットマシーンで遊んでたから、貰っちゃってもいいかなって思って盗みました!!」


勢いよく捲し立てるマリーの言葉を聞いた情報屋が口を開く。


「『アルカディアオンライン』では、プレイヤーがNPCの物を盗んでもプレイヤー善行値の変動はありませんが、プレイヤー間の情報のやり取りではプレイヤー善行値が変動するのでご注意ください」


「はい。気をつけます……」


「くぅん……」


項垂れたマリーを見て、真珠も項垂れる。


「うう。プレイヤーレベルが下がってたらどうしよう。怖くて確認できない……っ」


怯えるマリーに情報屋は苦笑して口を開いた。


「そこまで大幅には減少していないはずですよ。私はマリーさんの嘘に騙されず、嘘の情報を拡散させてもいませんから」


情報屋の言葉を聞いたマリーは表情を緩めた。

真珠はマリーが少し元気になったのを見てほっとする。


「スロットマシーンが故障したということのようなので『鑑定』してみますね」


情報屋はそう言ってソファーから立ち上がり、スロットマシーンに歩み寄る。

マリーと真珠は緊張しながら情報屋を見守った。

情報屋は『鑑定』を発動させてスロットマシーンをじっと見つめ……首を傾げた。

首を傾げた情報屋を見て、マリーと真珠も首を傾げる。


***


風月13日 早朝(1時40分)=5月21日 17:40



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