第五百五十九話 マリー・エドワーズと真珠は教会に死に戻り、動く階段で情報屋の『ルーム』に向かいながら、情報屋に話す内容を考える



マリーはスロットマシーンをアイテムボックスに収納して、フレンドからのメッセージを確認する。

メッセージの送り主はデヴィット・ミラー。情報屋だ。

真珠はスロットで王冠を三つ揃えたにも関わらず、ヘヴンズコインが1枚しか出なかったことに傷心して、お気に入りの丸椅子の上で丸まっている。





マリーさん。顧客との打ち合わせがキャンセルになったので、今なら時間があります。

私の『ルーム』に来られるようなら返信をお願いします。





情報屋からのメッセージを読み終えたマリーは丸椅子の上で丸まっている真珠に視線を向けて口を開いた。


「真珠っ。情報屋さん、今なら会ってくれるって。スロットマシーンの直し方、教えてもらおうねっ」


「わうっう!! わんっ!!」


真珠はマリーの言葉を聞いて復活した。

丸椅子から身軽に飛び下り、椅子の側にお座りをする。

マリーは情報屋に『今から情報屋さんのルームに会いに行きます』と記載して返信をした。

そして真珠の丸椅子をアイテムボックスに収納する。


「じゃあ、教会に死に戻るねっ」


マリーは『エリア・インビジブル』を発動させ、魔力枯渇で教会に死に戻った。


気がつくと、マリーは教会にいた。真珠も一緒だ。

食堂には客がいたけれど、マリーと真珠の姿は『エリア・インビジブル』で消えていて、その状態で死に戻ったので騒ぎにはなっていないはずだ。……たぶん。


「真珠。情報屋さんのルームに行こうね」


「わんっ」


マリーと真珠は連れ立ってフローラ・カフェ港町アヴィラ支店に向かった。


真珠と共にフローラ・カフェ港町アヴィラ支店の店内に入って来たマリーを見たカウンター当番の神官は、カウンターの外に出てマリーの前に屈みこむ。

彼は以前、幼女で背が低いマリーが、カウンターに指を掛けるために限界まで背伸びをしていたことを覚えていた。


「ようこそお越しくださいました。聖人様。聖獣様」


笑顔を浮かべて神官が言う。


「あのっ。情報屋さんのルームに行きたいです。私の名前はマリー・エドワーズです。この子は私のテイムモンスターで真珠といいます」


「わんっ」


「マリー・エドワーズ様と真珠様ですね。お待ち合わせの聖人様のお名前はデヴィット・ミラー様でよろしいですか?」


「はいっ」


情報屋とメッセージのやり取りをしたばかりのマリーは、情報屋の名前がデヴィット・ミラーだということをしっかりと把握していた。


「承っています。只今、ご案内致します。カウンターから1メートルほど離れて頂けますか?」


神官の男性はそう言うと、カウンターの上に置いてあった銀のベルを手に取った。

階段が現れることを承知しているマリーと真珠は、訳知り顔でカウンターから距離を取る。


「魔力操作ON。アンロック。聖人NO8029のルームへ」


男性神官はそう言った後に銀のベルを三回鳴らした。するとカウンターの前に階段が現れた。


「魔力操作OFF。お待たせいたしました。どうぞお進みください」


男性神官に促されたマリーと真珠は、彼にお礼を言って階段に足を進めた。


マリーと真珠はルームに続く階段に乗る。

真珠が『下りON』と吠えると階段が下に向かって動き出した。

得意げに胸を張る真珠を、マリーは拍手して称える。


「えっと、情報屋さんに聞くことと、売る情報を整理しよう。まずはスロットマシーンの直し方を聞くでしょ」


マリーの言葉に真珠は何度も首を縦に振る。

真珠が『王冠』の絵を三つ揃えたら、以前のようにたくさんコインが出てきてほしい!!

マリーは考えながら言葉を紡ぐ。


「あとは新しい固有クエストの情報を売って、それから『エリア・インビジブル』の取得した時の状況は……言わなくていいかな」


「くぅん?」


いつもマリーは『どんな情報でも売る!!』という姿勢なのに、なぜ『エリア・インビジブル』の情報を売らないのか不思議に思った真珠は首を傾げた。

マリーは肩を落として口を開く。


「今、私、お金に困ってないから、お母さんやお祖母ちゃんに怒られるのが嫌で、姿を隠して家に帰りたくて『エリア・インビジブル』を覚えたことは言わなくてもいいかなあと思って……」


「きゅうん……」


真珠は『エリア・インビジブル』を使ったにも関わらず、結局は、マリーの母親にものすごく怒られたことを思い出して震えた。


やがて動く階段を下りきり、マリーと真珠は情報屋の『ルーム』に続く扉の前に到着した。

マリーは正面の壁にある扉を開け、真珠はマリーの後に続く。


部屋の主の情報屋がマリーと真珠を笑顔で出迎えた。

マリーと真珠は情報屋に挨拶をして、彼と向かい合う形でソファーに座る。

さっき動く階段で考えたことを思い出しながら、マリーは口を開いた。



***


マリー・エドワーズのスキル経験値が上昇


エリア・インビジブル レベル1(14/100) → エリア・インビジブル レベル1(15/100) 


マリー・エドワーズの最大MP値が上昇


MP 54/54 → MP 0/55


風月13日 早朝(1時36分)=5月21日 17:36

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