第五百五十七話 マリー・エドワーズは真珠に光るビー玉を渡して、ユリエルと情報屋にメッセージを送信した後に食堂の隅に移動してスロットマシーンを取り出す



「わうー。くぅん……」


「大丈夫……。いっぱい走って、疲れただけ……」


床に座り込んでしまったマリーを見つめて心配そうに鳴く真珠にマリーは引きつった笑顔を向け、のろのろと立ち上がり、食堂の背もたれの無い四角い椅子によじ登って座る。

椅子に座ったマリーは床にお座りをしている真珠に両腕を差し伸べて微笑んだ。


「真珠。おいで」


真珠はマリーに肯き、彼女の膝の上に飛び乗った。

マリーは真珠をぎゅっと抱きしめ、彼の頭を優しく撫でる。


「いきなり教会に死に戻ってびっくりしたね。真珠の大事な丸椅子がちゃんとあってよかったね」


「わんっ」


真珠は青い目を細めて肯いた。

マリーの祖父が真珠のために作ってくれた丸椅子は、初めての、真珠だけの宝物だ。

マリーはひとしきり真珠を撫でた後、彼の青い目を覗き込んで口を開く。


「真珠。私、ユリエル様にメッセージを書くから、真珠は少しの間、光るビー玉で遊んでいてくれる?」


真珠はスロットで遊びたかったが、マリーの言うことを聞いて肯いた。

そして、マリーの膝の上から床に飛び下りる。


「ステータス」


マリーはステータス画面を出現させて、アイテムボックスから光るビー玉を取り出し、床にお座りをしている真珠の前に置いた後、ステータス画面のフレンド機能をタップした。

真珠は光るビー玉を前足で転がして遊び、マリーはユリエルにメッセージを書き始めた。





ユリエル様。領主館とグリック村には潤沢に塩があるのに、うちの『銀のうさぎ亭』では塩が足りなすぎる薄い味のスープを食べています。

庶民にも塩が必要だと思うんです!!

港町アヴィラは海の近くの街だし、塩を作るのは簡単ですよね?

領主様に、たくさん塩を作って庶民が塩を好きなだけ使えるようにお願いしてもらえませんか?

私の固有クエスト『塩を安価に、庶民の手に!!』の達成にも関わってくることなので、協力をよろしくお願いします……!!





マリーは自分が書いたメッセージを読み返して送信した。

それから情報屋に『新たな固有クエストが発生したので情報を売りたいです。情報屋さんの時間が空いたら連絡をください』と記載してメッセージを送信した。


「メッセージの送信、終わりっ。クローズ」


ステータス画面を消したマリーは息を吐き、真珠に視線を向けて微笑んだ。


「真珠。メッセージを送信し終わったよ。ひとりで遊ばせてごめんね。スロットやる?」


マリーの言葉に、真珠は前足でビー玉を転がすのをやめて何度も首を縦に振る。


「わう!! わんわぅ、わうっう、わう!!」


マリーはちぎれんばかりに尻尾を振って吠える真珠の頭を撫でて、光るビー玉をアイテムボックスに収納した後、口を開く。


「食堂のお客さんの邪魔にならないように、隅っこで遊ぼうね」


「わんっ」


マリーと真珠は朝食を食べるために食堂を訪れた客の邪魔にならない隅に移動した。

マリーが座っていた椅子に、NPCの商人の男が座る。


真珠と共に部屋の隅に移動したマリーはステータス画面を出現させてアイテムボックスからスロットマシーンを取り出した。



***


風月13日 早朝(1時15分)=5月21日 17:15



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