第五百五十五話 マリー・エドワーズはノーマに彼女の幼なじみの名前を聞き、ノーマと別れた後に真珠に『クリーン』を使うと宣言する
マリーと真珠は頑張って薄味の野菜スープを食べ切った。
氷箱で冷やされたミルクは冷たくておいしかった。
木のコップに入ったミルクを飲み切ったノーマは微笑んで口を開く。
「マリーちゃんに……マリーちゃんとシンジュくんに話を聞いてもらって安心したわ」
「近いうちに、私と真珠がグリック村に行くね」
「わんっ」
マリーの言葉に続いて、空になった二つの平皿の前からお気に入りの自分の丸椅子に飛び乗って座り、真珠も肯く。
「ありがとう。よかった。彼と会ってね。私の幼なじみの名前はロビー・アールよ」
そう言った後、ノーマは瞬いた。
もしかしたらノーマは眠いのかもしれない。
今は夜で、NPCは眠る時間だ。
プレイヤーのマリーとテイムモンスターの真珠は眠らなくても元気でいられるがNPCのノーマには睡眠が必要だろう。
「ノーマさん。夜なのに訪ねてごめんなさい。眠いでしょ? 部屋に戻って休んで」
マリーがそう言うと、ノーマは首を横に振って口を開く。
「せっかくマリーちゃんとシンジュくんに会えたんだから、もっとお喋りしたいわ」
「またすぐに会えるよ。だからノーマさんは寝て。睡眠不足だと元気が出ないよ」
『アルカディアオンライン』には様々な状態異常が有りそうなので……マリーと真珠は状態異常『恐怖』にしか罹ったことがないと思うが……ノーマが状態異常『睡眠不足』等になってしまうのが心配だ。
「わかったわ。私、部屋に戻るわね」
「うん。おやすみなさい。ノーマさん」
「わーう。わんわんっ」
「おやすみなさい。マリーちゃん。シンジュくん。あ、この木のコップはどこに片づければいいの?」
自分が飲んだ分の木のコップに視線を向けて言うノーマに、マリーは微笑んで口を開く。
「私とお祖母ちゃんがしまうから大丈夫だよ。気にしないで」
「そう? じゃあ、任せるわね。ありがとう。じゃあ、おやすみなさい」
ノーマはマリーと真珠に手を振って、食堂を出て行った。
後に残ったマリーは真珠に向き直り、口を開く。
「真珠。私は今から、汚れたコップを綺麗にするために『クリーン』を使うよっ」
「わうーん!!」
真珠は自分の汚れた足を綺麗にしてくれる『クリーン』をマリーが初めて使うという宣言を聞いて、青い目を輝かせた。
「行きますっ!! ノーマさんがミルクを飲んだ木のコップを綺麗にしたい!! 魔力操作ON、クリーンON!!」
ノーマが使った木のコップに手をかざしてマリーが叫ぶ。
マリーは一気に魔力が吸われる感覚に眩暈がした。
その数秒後、マリーと真珠の姿は光に包まれて食堂から消えた。
マリーは魔力枯渇で死亡した……。
***
マリー・エドワーズのスキル経験値が上昇
クリーン レベル1(0/100)→ レベル1(10/100)
マリー・エドワーズの最大MP値が上昇
MP 53/53 → MP 0/54
風月12日 真夜中(6時56分)=5月21日 16:56
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