第五百五十二話 マリー・エドワーズと真珠は『銀のうさぎ亭』に泊まっているノーマを訪ね、ノーマの話を聞くために食堂に移動する



マリーと真珠はグリック村の村長の娘、ノーマ・グリックが泊まっている二階の201号室の前に立った。

客室の扉の横や階段に備え付けられたランプの明かりが揺れている。

『何時でもいいから部屋を訪ねて欲しい』と言ったというノーマからの伝言を信じ、マリーは201号室の扉を三回ノックした。


「ノーマさん、まだ起きてるかなあ?」


「きゅうん?」


マリーと真珠は部屋の中からの返事を待つ。

扉が細く開いたので、マリーは口を開いた。


「ノーマさんですか? マリーと真珠です。お祖母ちゃんから伝言を聞いたから、夜だけど来ました」


「わんわんっ」


マリーに続いて真珠も吠えた。


「マリーちゃん。シンジュくん。来てくれてありがとう。今、着替えて来るから少し待ってね」


客室の扉の内側からノーマが言う。

マリーは微笑んで口を開いた。


「わかりました。待ってますね」


「わんっ」


マリーに続いて真珠も肯く。


「ありがとう。急いで着替えるわね」


ノーマがそう言った後、細く開けていた扉を閉めた。

マリーと真珠は部屋の前の廊下で光るビー玉を転がして遊びながら、ノーマを待つ。

やがて、部屋の扉が開き、着替えたノーマが姿を現した。

ライムミントの色の半袖のワンピースは可憐なノーマによく似合っている。


「マリーちゃん。シンジュくん。待たせてごめんね」


申し訳なさそうに言うノーマに、マリーと真珠は揃って首を横に振る。


「待っている間、真珠と光るビー玉を転がして遊んでいたから気にしないで」


「わんわんっ」


床に転がしていた光るビー玉をノーマに見せながら言うマリーに、真珠も肯く。


「『びーだま』は光っていてとても綺麗ね。見せてくれてありがとう」


微笑んで言うノーマにマリーは肯き、光るビー玉を左腕に触れさせてアイテムボックスに収納した。

それからマリーは祖母から聞いた話を思い出しながら、ノーマを見つめて口を開く。


「私、お祖母ちゃんから、ノーマさんが元気が無いっていう話を聞いて心配してたの。大丈夫?」


マリーの言葉を聞いたノーマは表情を曇らせて口を開いた。


「私、聖人のマリーちゃんに相談したいことがあるの。話を聞いてくれる?」


「うん。もちろんいいよ」


「わんわぅ、わんわんっ」


真珠も『ノーマの話を聞くよ!!』という意志を込めて吠え、尻尾を振る。


「ありがとう。マリーちゃん。シンジュくん」


ノーマはマリーと真珠に微笑んで、真珠の頭を優しく撫でた。

ノーマに頭を撫でてもらった真珠は嬉しくて、青い目を細める。

そしてマリーと真珠、ノーマは、ノーマの話を聞くために食堂に向かった。



***


風月12日 真夜中(6時33分)=5月21日 16:33



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