第五百五十一話 マリー・エドワーズが用意したスロットマシーンで真珠が遊び、ノーマが泊まっている部屋に行く



「シンジュが丸椅子を気に入ってくれたみたいでよかったわ。お祖父ちゃんも喜ぶ」


祖母は丸椅子に座って尻尾を振っている真珠を見つめて微笑み、言った。

マリーは周囲を見回して祖父の姿が無いことを確認して口を開く。


「お祖父ちゃんは?」


「今は寝てるわ。あ、そうだ。マリー。ノーマちゃんが今、うちの宿に泊まっているのよ。マリーが起きたら『何時でもいいから部屋を訪ねて欲しい』と伝えてと言われていたの」


「でも、今は夜だからノーマさんの部屋に行ったら迷惑だよね?」


「そうね。どうしたらいいかしら? 一応、部屋に行ってみる? 客室は二階の201号室よ」


「わかった。行ってくる。真珠、ノーマさんに会いに行こう」


マリーがそう言うと、丸椅子に座っている真珠は首を横に振る。


「わんわぅ、わうっう、わう!!」


「わうっう。真珠はスロットで遊びたいの?」


「わんっ」


真珠はマリーの言葉に力強く肯く。

マリーは真珠に微笑んで口を開いた。


「じゃあ一回スロットで遊んでから、ノーマさんに会いに行こうね」


「わんっ!!」


真珠は新しい真珠の丸椅子で大好きなスロットマシーンで遊べて嬉しくて、勢いよく尻尾を振る。

マリーはカウンターの近くにスロットマシーンを出しては邪魔になるので家族用の階段の側にスロットマシーンを置くことにした。


家族用の階段の側に移動したマリーはアイテムボックスからスロットマシーンを取り出した。

真珠は座っていた丸椅子から飛び下り、丸椅子を鼻で押して動かそうとする。だが椅子は動かない。

見かねた祖母がカウンターから出て、丸椅子をスロットマシーンの前に運んでくれた。


「わうわうう!!」


真珠は祖母の後について歩き、スロットマシーンの前に丸椅子を置いてくれた祖母にお礼を言う。

祖母は真珠に微笑み、彼の頭を優しく撫でてカウンター内に戻った。


マリーはアイテムボックスからヘヴンズコインが入った皮袋を取り出し、その中からヘヴンズコインを1枚取り出してスロットマシーンのコイン投入口に入れた。

スロットは賑やかな音を出して動き出し、真珠はスロットで真剣に遊んで『王冠』を三つ揃えた。

いつものようにたくさんのヘヴンズコインがコインの受け取り口に流れ出る様をわくわくしながら見ていた真珠とマリーは、コインが数枚だけ出てしんと静まり返ったことに首を傾げる。


「なんでコインがちょっとしか出ないんだろうね?」


「くうん?」


マリーと真珠は顔を見合わせて困惑した。

だが、スロットマシーンの賑やかな音が静まってもヘヴンズコインがコインの受け取り口に出てくる様子が無い。

マリーはとりあえず数枚のヘヴンズコインを回収し、真珠は自分の丸椅子から飛び下りた。


「真珠。丸椅子とスロットマシーンをアイテムボックスにしまうね」


「わん」


マリーは真珠が肯いたことを確認して、丸椅子とスロットマシーンを左腕の腕輪に触れさせてアイテムボックスに収納した。


「じゃあ、ノーマさんが泊まっている部屋に行こうか」


「わんっ」


マリーは真珠を促し、客用の階段を駆け上がった。


***


風月12日 真夜中(6時20分)=5月21日 16:20



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