第五百五十話 マリー・エドワーズと真珠は目覚めて一階に行き、真珠は祖父が作った新しい丸椅子を見て目を輝かせる



目覚めると部屋の中は暗かった。

マリーは瞬きをして、ベッドから身体を起こす。

父親のいびきは聞こえない。

目覚めた真珠がマリーにすり寄る。


「わうわぅ。わうー」


「おはよう。真珠。ステータス」


マリーは小さな声で真珠に挨拶をして彼の頭を撫でた後、ステータス画面を出現させて部屋の様子を探る。

部屋のベッドで寝ているのは母親ひとりのようだ。父親の姿はない。

マリーは半袖の寝巻を着ている。

真珠はマリーに身を寄せておとなしくしている。


「真珠。私、ステータス画面の光で着替えて来るからちょっとだけベッドの上で待ってて」


マリーは真珠を見つめて口を開き、小さな声で言った。

真珠はマリーの言葉に肯く。


マリーはベッド脇に置いてある布のスリッパを履いてクローゼットに行き、寝巻を脱いで半袖のシャツとキュロットスカートを履いた。

それから脱いだ寝巻を畳んでベッドの上に置き、ベッドに座って布のスリッパからアイテムボックスに収納していた『疾風のブーツ』を履き、立ち上がる。


「真珠。暗くて危ないから抱っこするね」


ステータス画面の光はプレイヤーにしか見えず、テイムモンスターの真珠は真っ暗な視界のままだ。

マリーの言葉に真珠は肯き、マリーは真珠を抱っこして、なるべく足音を立てないように気をつけながら扉へと歩き出す。

真っ暗な中遊びに出かけて、母親に怒られるのはマリーも真珠も嫌なのだ!!

でも、真っ暗な部屋の中で明るくなるまでじっとしているなんて耐えられない……。


マリーは扉の前で真珠を床に下ろし、扉を開けた。

真珠は自分で扉の外に出て、マリーも真珠の後に続く。

自分たちが外に出た後、マリーはそーっと部屋の扉を閉めた。


「……」


……マリーの母親が起きてマリーたちを追ってくる気配はない。

マリーと真珠は視線を合わせて微笑んだ。

脱出成功!!

マリーと真珠はランプの明かりに照らされた段差の大きい階段を下りて一階に向かう。


「マリー。シンジュ。起きたのね」


カウンターには祖母がいた。

真珠はカウンター前に椅子が二つ並んでいることに気がついて青い目を輝かせる。


「お祖父ちゃんがシンジュの椅子を作ってくれたのよ。見本の椅子がなかったから作った椅子は高さが少し高くなっちゃったみたいだけど……」


祖父が椅子を作りに職人ギルドに行っている途中、椅子をアイテムボックスにしまったマリーが眠ってしまったから、勘で作るしかなかったのかもしれない。


「わんわぅ、わう!!」


真珠は『真珠の椅子!!』と吠えて新しい丸椅子に飛び乗った。


***


風月12日 真夜中(6時12分)=5月21日 16:12



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