第五百四十七話 高橋悠里と祖母は食器を洗って片づけながら『アルカディアオンライン』の話をした後にフラワーバスケットの手入れ方法を聞く



『レディ・ローズ』の空箱を自室の引き出しにしまった悠里はダイニングに引き返す。


ダイニングではミニパンケーキを食べ終えた祖母がキッチンから持ってきたトレイに汚れた食器を乗せている。

『レディ・ローズ』のマカダミアナッツのチョコレート菓子が入った正方形の箱は蓋をしてある。


「悠里。マカダミアナッツのチョコレート、おいしかったわ。ありがとう。もう食べないのなら、冷蔵庫にしまってきなさい」


「わかった」


祖母の言葉に肯き、悠里は『レディ・ローズ』のマカダミアナッツのチョコレート菓子が入った正方形の箱を手に、キッチンの冷蔵庫に向かう。


母親に見つかりにくいと思う場所にマカダミアナッツのチョコレート菓子が入った正方形の箱を置き、悠里はキッチンでミニパンケーキを焼いて汚れたフライパンを洗い始めた。


汚れた食器を乗せたトレイを持った祖母がキッチンに現れた。

悠里が汚れた食器を洗い、祖母が食器を拭いて片づける。


「二人でやると片付くのが早いわね。悠里。ありがとう」


「お祖母ちゃんも、おいしいミニパンケーキとお弁当、ありがとう。要先輩もすごく喜んでくれて嬉しかった」


「そう。よかったわね。要先輩に『レディ・ローズ』のチョコレートのお礼を言っておいてね。すごくおいしかったわ」


「うん。でもなんでお祖母ちゃんも『要先輩』っていうの?」


「悠里がそう呼んでいたから、つい呼んでしまったの。『先輩』なんて口にしたのは何十年ぶりかしら? でも要くんがうちに遊びに来た時に『要先輩』って呼ぶのは変だから、気をつけないとね」


要が悠里のうちに来る。

……うちの前には何度も来てくれているけれど、でも家の中に入ってもらったことは無い。

駅前のタワーマンションに住んでいる要を、ザ・庶民の家に招いても良いのだろうか。

考えても答えが出ないので、悠里は話題を変えることにした。


「お祖母ちゃんは最近『アルカディアオンライン』で何をしてるの?」


「私は『青龍様の傷を癒す』っていう固有クエストをやっているわよ」


「『せいりゅうさま』って誰? 人魚の偉い人?」


祖母の主人公が人魚であると知っている悠里は洗い物をしながら問いかける。


「青龍様は龍の神様よ。すごく大きな龍なのよ。今は海底神殿で傷を癒していらっしゃるの」


「りゅう? 『せいりゅうさま』って龍なの? もしかしてヘヴン島を攻撃した青龍?」


「さあ……? でも誰かと戦ったから、あんなに傷だらけだったのかもしれないわね」


「私、青龍ってレイドボスかと思ってた。ブレス攻撃めちゃくちゃ怖かったんだよ……!!」


「悠里は青龍様と戦ったの?」


「私は戦わなかった。青龍がヘヴン島に現れて攻撃をし始めた時、真珠とユリエル様と一緒に地下のカジノに行ったの」


悠里は祖母とひとしきり『アルカディアオンライン』の話をした後、フラワーバスケットの手入れ方法を聞こうと思い立つ。


「お祖母ちゃん。フラワーバスケットの手入れの方法って知ってる?」


「花が刺してあるスポンジに水を含ませるといいみたい。洗い物はもうだいたい片付いたから、悠里はもう行っていいわよ」


「うんっ」


悠里は洗ったカップに水を入れて二階の自室に向かった。


ユリエルに貰ったフラワーバスケットの花が刺してあるスポンジに水を含ませた後、悠里は水を入れていたカップを机の上に置き、スマホを手にして要に送るメッセージを考える。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る