第五百三十九話 高橋悠里と要が帰った後の教室で颯太は友達のわがままなメッセージを読み、静かにキレる

「高橋ちゃん。鞄、見ててくれてありがとうっ」


「高橋、サンキュ」


悠里にお礼を言う萌花と颯太に微笑み、悠里は口を開いた。


「あのねっ。相原くんのスマホが鳴ってたみたいだよ」


「もしかして相原くんの友達から連絡きたんじゃないっ!?」


「俺、間に入って対応するのとかめちゃくちゃ面倒くさいんで、友達に篠崎先輩の連絡先教えてもいいですよね?」


「いいよっ。直接やり取りするの楽しみだなあ。友達の名前、雑賀くんでいいんだよね?」


「はい」


颯太は萌花に肯き、スマホを取り出してスマホを操作し、スマホの画面を見つめながら言う。


「じゃあ、雑賀にメッセージ送りますんで。……はあっ!?」


「えっ? なになに? どうしたの?」


颯太のスマホの画面をのぞき込もうとする萌花を、颯太は手で制した。


「篠崎先輩。近いからっ。ソーシャルディスタンスを取ってくださいよ。二メートル離れて」


「二メートル離れるって、吹奏楽部の先輩と後輩の距離として、有り得なくない……?」


萌花はそう言いながらも颯太に言われた通りに彼から二メートルくらい離れた。

悠里は元気が無さそうだった颯太が楽しそうでよかったと思いながら、颯太と萌花を見つめる。


「悠里ちゃん。帰ろう」


「はいっ」


要は颯太と萌花にまったく興味を示さずに悠里を誘い、悠里は要に肯いて颯太と萌花に視線を向けた。


「私たち、帰ります。お疲れさまです……っ」


「高橋ちゃん、藤ヶ谷くん。お疲れっ。また来週っ」


萌花が元気に言って手を振り、颯太は軽く手を上げる。

そして悠里と要は連れ立って教室を出た。


教室に残った颯太は自分のスマホの画面を見つめて舌打ちする。

画面には、颯太の男友達の雑賀小太朗からのメッセージが表示されている。





颯太。写真見たけど、なんか違うなって思ったから断っといて。

オレ的には目が大きくて顔が小さくて胸がでかい子がいい。





颯太は雑賀からのメッセージを萌花に見せないようにして、高速で返信メッセージを記載する。





ふざけんな!! お前が『誰でもいいからカノジョ欲しい』って言ったんだろうが!!

とにかく一回デートしろ!! それで断るなら自分で断れ!!

篠崎先輩の連絡先伝えるから、後は本人同士でやり取りしろよ!!

篠崎先輩に連絡しなかったら友達の縁切るからな!!





颯太は怒りのままにメッセージを書いた後、萌花の連絡先を追記して送信した。

萌花に見られないように、雑賀からのメッセージは削除する。


「マジで友達紹介とか面倒くさい。もう絶対しない……っ」


「相原くん。雑賀くんからのメッセージとか来てた?」


きちんと二メートルの距離を保ったまま、萌花が颯太に尋ねる。


「来てました。今、篠崎先輩の連絡先を伝えたんで、後は本人同士でお願いします。じゃあ、俺帰るんで」


颯太は萌花にそう言って、自分の通学鞄を持って教室を出た。


「あたしも帰ろうっ」


萌花も、弾むような足取りで教室を出た。



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