第五百二十四話 高橋悠里は強制ログアウトして寝ようとしたが寝られず、要からのメッセージで彼が固有クエスト『行方不明の娘を探して欲しい』をこなそうとしていると知る



悠里が目を開けると、つけっ放しにしている部屋の電気の光が目を射る。

眩しい……。

悠里は横たわっていたベッドから起き上がり、ヘッドギアを外して電源を切る。

それからゲーム機の電源を切った。

ヘッドギアとゲームをつなぐコードを外してコードを机の上に置き、ゲーム機器を充電する。


「『アルカディアオンライン』のプレイ時間が6時間で終わりっていうのは短すぎるよね。もっと長くしてくれたらいいのに……っ」


悠里は文句を言いながらスマホを手にして、マリーが強制ログアウトをしたことで迷惑をかけてしまった謝罪のメッセージを送る。

そして明日の朝、起きるためにアラームをセットしたスマホを枕元に置く。


「……トイレに行こう」


悠里はそう呟いて部屋を出た。


トイレを済ませた悠里は部屋に戻り、部屋の電気を消してベッドに潜り込む。

全然眠くないけど、もう寝よう。

おやすみなさい……。


……ベッドに入って幾星霜。

というほどではないけれど……眠れない……。

なんで寝たいのに寝れないの……?

悠里はベッドの上で寝返りをうち、ため息を吐く。


「寝ーれーなーいー」


なぜ人は、寝たいと思って1秒後に寝ることが出来ないのだろう。

どうして給食後の五時間目の授業は死ぬほど眠くなるのだろう……。


「もう寝れないの、飽きた!!」


悠里はそう叫んでスマホを見た。

時間は23:46だ。……まだ日付が変わっていないから『アルカディアオンライン』をプレイすることができない。


「『アルカディアオンライン』のワールドクエストの公式動画とか見ようかなあ。でもそんなことしたらもっと寝れなくなっちゃうかなあ……?」


悠里がため息交じりにそう言った直後、要からのメッセージが来た。


「要先輩からのメッセージ……っ」


悠里はスマホの明かりだけが光る真っ暗い部屋で、要からのメッセージを確認した。





悠里ちゃん。メッセージを読んだよ。

強制ログアウトのことは気にしないでね。

『アルカディアオンライン』はアラーム設定できないゲームだから、強制ログアウトは避けられないと思うから。

眠ってしまったマリーちゃんや真珠くんはマリーちゃんのお父さんが運んでいたから心配しないでね。


それで、マリーちゃんたちと別れて領主館に戻ったんだけど、領主館の前で酔っ払いのNPCが号泣していたんだ。

そうしたら固有クエスト『行方不明の娘を探して欲しい』が発生してびっくりしたよ。


男を領主館に招き入れて話を聞いたんだけど、全然要領を得なくて途方に暮れていたんだけど、男が描いたという娘の絵を見せてもらって、探しているのがヘヴン島の『赤い珊瑚亭』の受付カウンターにいた女性NPCじゃないかと思ったよ。

夜更かしすることになるけど、これからログインして固有クエストを進めてみるよ。

明日は寝坊しないように気をつけるね。





悠里は要からのメッセージを読み、スマホの時間を確認する。

まだ23:48だ。……悠里は『アルカディアオンライン』をプレイできない。

日付が変わるまでに眠れなければ悠里も『アルカディアオンライン』をプレイしよう。

悠里はそう思いながらスマホを枕元に置き、ベッドに横になって目を閉じた。



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