第五百十五話 マリー・エドワーズは祖母に怒られ、真珠はスロットマシーンで遊べなくて大泣きをして、祖父に宥められる



三つの絵を揃えられずに頭を抱える狩人NPCの青年に、マリーは微笑んで口を開いた。


「お兄さんっ。二回目以降は一回銅貨1枚でいいですよっ。もう一回やりますか?」


「やる!!」


狩人NPCの青年は即答し、次は自分が遊ぶ番だと思っていた真珠は涙目になる。


「わうっ!! わんわぅ、わうう!!」


「お客さんたち、遊んでないで宿代を清算してくださいっ。マリー。カウンターの側に大きい置物を置いたら邪魔だから片づけなさいっ」


真珠の抗議の声と重なるように、カウンター内にいる祖母が言う。

スロットマシーンで遊んでいた狩人NPCの青年は丸椅子から立ち上がり、見物していた宿泊客たちはカウンター前に列を作った。


「お祖母ちゃんに怒られた……」


マリーはしょんぼりと肩を落としてヘヴンズコインが入った皮袋を左腕の腕輪に触れさせて収納した後、スロットマシーンも同じようにアイテムボックスに収納する。


「ぎゃわんっ!!」


真珠はマリーがスロットマシーンを収納したことにショックを受けて震える。

真珠はスロットマシーンで遊びたかった……!!

スロットマシーンが突然消え失せたことは、カウンターに並んだ宿泊客たちに衝撃を与えたが、NPCたちも聖人の奇行には多少慣れてきている。

大騒ぎにはならなかった。


「わうー!! わんわぅ、わうう!!」


真珠は涙目でマリーに訴えた。

マリーはしゃがみ込んで真珠の頭を撫で、口を開く。


「真珠。お祖母ちゃんに怒られたから、我慢しようね」


「ぎゃわああああああああああああああああんっ!!」


怒られたのはマリーで真珠ではない!!

真珠は悲しくて大泣きした。

マリーの祖父が大泣きしている真珠を抱き上げてあやしながら口を開く。


「シンジュ。泣くな。今からシンジュの椅子を作りに行こう。な? 俺が椅子を作ってやるから泣き止め」


「えぐっ。わう、うううううううううう……っ」


真珠は祖父の片口に涙で濡れた顔を押し付ける。


「真珠。お祖父ちゃんに椅子を作ってもらったら、スロットマシーンで遊ぼう!!」


マリーは真珠に泣き止んでほしくて、そう言う。


「ううっ。えぐっ。……わん」


祖父の片口に涙で濡れた顔を押し付けていた真珠はマリーに視線を向けて小さく肯いた。

祖父の片口は真珠の涙と鼻水で濡れている……。

祖父は微笑んで、泣き止もうとしている真珠の頭を撫で、マリーに視線を向けて口を開いた。


「マリー。その丸椅子もしまってくれるか? 見本に使いたいんだ」


「わかった」


マリーは祖父に肯き、丸椅子をアイテムボックスに収納する。

それから祖父は祖母にマリーと真珠を連れて出かけると告げて、右腕にマリーを、左腕に真珠を抱っこして『銀のうさぎ亭』を出た。


***


マリー・エドワーズの現在の所持金 3495501リズ → 3496501リズ ※スロットマシーンで遊ぶ対価銀貨1枚分増加(第五百十四話分)


風月9日 昼(3時07分)=5月20日 19:07



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る