第五百十四話 マリー・エドワーズはスロットマシーンで商売を始める
「面白そうだな。俺にも一回やらせてくれないか?」
一番最初からスロットマシーンを見ていた商人の男が言う。
真珠は自分がもっと遊びたいと思ったが、男が真珠を応援してくれたのでダメと言い出せない……。
「一回、銀貨1枚になりますっ。絵が三枚揃ったら石のコインが出てきますっ。石のコインは銅貨1枚と交換致しますっ」
マリーが商売を始めた!!
今こそ唸れ、マリーの『接客』スキル……!!
「銀貨1枚か。結構高いな……」
商人の男はそう呟いて考え込んだ。
真珠は男がスロットで遊ばないようにと願いながら、じっと男の顔を見つめる。
商人の男が迷っていると、狩人ギルドの仮眠室からあぶれて『銀のうさぎ亭』に宿泊した狩人NPCの青年が元気よく手を上げて口を開いた。
「オレ、やりたい!! 今晩、飲み屋に行かなけりゃ、銀貨1枚払えるぜっ」
狩人NPCの青年の脳裏には、真珠が王冠の絵を三枚揃え、たくさんの石のコインが出てきた光景が浮かんでいる。
あれだけのコインがあれば、銀貨1枚の元は取れるだろうと彼は考えた。
マリーはアイテムボックスから以前、お小遣いの銅貨と石貨をためていたガラス瓶を取り出して狩人NPCの青年に差し出す。
「このガラス瓶に銀貨1枚を入れてくださいっ」
笑顔で言うマリーに狩人NPCの青年は肯き、銀貨1枚をガラス瓶に入れた。
マリーは笑顔になり、口を開く。
「ありがとうございますっ。今、コインを1枚渡しますね」
マリーは銀貨を入れたガラス瓶を左腕の腕輪に触れさせて収納し、皮袋に入れているコインを1枚青年に渡した。
真珠は自分がスロットで遊びたかったのにと思いながら丸椅子から飛び下り、不貞腐れて床に丸まる。
「お兄さん。丸椅子に座ってください。コインはこの投入口に入れてください」
「わかった」
狩人NPCの青年はマリーに言われた通りに丸椅子に座り、コイン投入口に入れた。
スロットが回り出す。
にぎやかな音を立てて回り出すスロットに、丸まっていた真珠が顔を上げた。
「おおっ。回った……っ」
狩人NPCの青年がはしゃいだ声をあげる。
「回っているスロットを止めるには、スロットマシーンの丸いボタンを押してください。丸いボタンを押すと、一個ずつスロットが止まります。三つ同じ絵が揃ったら、石のコインが出てきます」
「わかった。やってみる……っ」
狩人NPCの青年はマリーの言葉に肯き、真剣な表情で丸いボタンに右手を乗せる。
マリーと真珠は真剣に回るスロットを見つめる。
祖父や商人の男、宿泊客たちも回るスロットを見つめている。
カウンター内にいる祖母が呆れた顔でため息を吐いたその時、狩人NPCの青年がスロットマシーンの丸いボタンを押した!!
一番左端のスロットが止まる。
『剣』の絵が出た……!!
見物している者たちが『剣』の絵を見てどよめく。
真珠は、いつも狙っている『おうかん』が出なかったのでほっとした。
『剣』の絵を見たマリーが口を開く。
「お兄さん。『剣』の絵を三つ揃えるとコインが貰えますよっ。頑張ってくださいっ」
「わかった……っ」
狩人NPCの青年はマリーの言葉に肯き、真剣な表情で回るスロットを見つめる。
そして、スロットマシーンの丸いボタンを押した!!
真ん中のスロットが止まり……『盾』の絵が出た。
見物人たちが、がっかりしてため息を吐く。
「くそ……っ。『剣』じゃなかった……っ」
狩人NPCの青年は悔しさをぶつけるように乱暴に丸いボタンを押し、一番右側のスロットが止まる。
『剣』の絵が出た……!!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!! 真ん中が『剣』だったら三つ揃ったのに……!!」
『銀のうさぎ亭』に狩人NPCの青年の絶叫が響き渡った。
***
マリー・エドワーズのスキル経験値が増加
接客 レベル1(35/100)→ 接客 レベル1(40/100)
マリー・エドワーズが得たスロットマシーンの対価 銀貨1枚
風月9日 昼(3時01分)=5月20日 19:01
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