第五百四話 高橋悠里は祖父から花束が入った発泡スチロールの箱が和室にあると聞き、自分が頼んだ花束と要からのプレゼントの花束の箱を目にする
『アルカディアオンライン』のプレイを終えた悠里がベッドを下りて伸びをしたその時、部屋のドアが開いて祖父が姿を現した。
「悠里。来たぞ。とりあえず和室に置いてある」
部屋に入るなり言う祖父に、悠里は笑顔になって口を開く。
「花束、来たの!?」
「三箱来たぞ」
祖父の言葉を聞いた悠里は二度瞬いて口を開いた。
「三箱? 二箱じゃなくて?」
「箱は三つあったぞ。二つは差出人が悠里の名前で、一つは長い外人の名前だった」
「えっ!? 外人の名前!? 間違って配送されたとか……っ!?」
「とにかく和室に行って確認してくれ。お祖母ちゃんに見つかる前に花束をプレゼントしたい。サプライズの方が喜ぶんだろう?」
祖父はそう言いながら部屋を出て行く。
悠里も祖父の後を追った。
一階の和室に到着した。
いつもここに布団を敷いて、祖父と祖母は眠っている。
和室の隅に大きな発泡スチロールの箱が置いてあった。
あれが花束が入った箱だろうと思った悠里は、大きな発泡スチロールの箱の蓋を開ける。
「本当だ。三つ入ってる」
二つの箱の差出人は高橋悠里。
そしてもう一つの箱の差出人はユリエル・クラーツ・アヴィラだ。
「ユリエル様……っ」
悠里はユリエルからのプレゼントを発泡スチロールの箱から取り出した。
「悠里。その外人さんとは友達なのか?」
「えっと……黙秘しますっ」
要は悠里にとって大切なカレシだが、それを祖父に言うのは躊躇われた。
でも要を『友達』とは言いたくない。カノジョのプライドというやつだ。
「お祖父ちゃん。お祖母ちゃんとお母さんに花束をプレゼントしておいてね。私、ちょっと急用を思い出したから部屋に戻るねっ」
悠里は祖父にそう言って、要からのプレゼントの花束が入った箱を持って和室を飛び出し、二階の自室に向かう。
二階の自室に戻った悠里は要からのプレゼントの花束が入った箱をそっとベッドの上に置いて息を吐く。
「男子に花束を貰ったのも、カレシに花束を貰ったのも初めて……っ」
すごい。花束を貰えるなんて、すごい。なんて素敵なんだろう。
悠里は嬉しくて叫び出したいような、泣いてしまいそうな気持ちを抱えながら、箱から花を取り出す。
それは、花束というよりフラワーバスケットといった方が正しいような気がする。
白い可愛いバスケットの中に、ピンクのミニバラやデイジーがアレンジメントされている。
「可愛い!! 嬉しい……!!」
悠里はピンクのミニバラやデイジーがアレンジメントされているバスケットをどこに置こうか迷い、ぬいぐるみを置いていた棚の上にしようと決めた。
ぬいぐるみを棚の端に寄せ、ピンクのミニバラやデイジーがアレンジメントされているバスケットを棚の上に置く。
白いバスケットと可愛らしい色合いのミニバラやデイジーのおかげで部屋が明るくなったような気がする。
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