第五百三話 マリー・エドワーズと真珠は『エリア・インビジブル』を発動させてベッドがある部屋に行き、母親に見つかってお説教をされた後にログアウトする



マリーと真珠、クレムは『銀のうさぎ亭』の前に立ち、引き締まった表情で扉を見つめる。


「マリー。真珠。心の準備はできてるか?」


クレムの言葉にマリーと真珠は力強く肯く。

クレムはマリーと真珠が肯いたことを確認して口を開いた。


「マリーが『エリア・インビジブル』を発動させたらオレがドアを開けるからな。あとは頑張れ」


「わかった」


「わんっ」


「じゃあ、行くよ!!」


マリーは『エリア・インビジブル』を発動させ、クレムが『銀のうさぎ亭』の宿屋の扉を開ける。

『エリア・インビジブル』により姿を消したマリーと真珠は全速力で駆けて行く。


カウンターには祖母がいたが、扉を開けたクレムに笑顔で話しかけていて『エリア・インビジブル』を発動させたマリーと真珠が駆け込んだことには気づいていないようだ。

マリーと真珠は段差の大きい階段を駆け上がり、ベッドがある部屋の扉の前で足を止めた。


「魔力操作OFF」


そしてマリーは『エリア・インビジブル』の発動を停止する。

ステータス画面を出現させてMPの残量を確認すると『3』だった。ヤバすぎる。ギリギリだ。

飲みかけの初級魔力回復薬がアイテムボックスにまだ入っているはずだけれど、今は飲まなくてもいいだろう。

マリーと真珠は視線を合わせて微笑み、肯く。


本当は『お説教、回避大成功!!』と真珠と一緒におおはしゃぎしたかったが、うるさくすれば家族に見つかってしまう。

マリーはそーっと部屋の扉を開けて部屋の中に入った。真珠もマリーの後に続く。

こうしてマリーと真珠の『お説教回避大作戦』は大成功……と思われた。

だが、現実もゲームの世界も甘くはないようで……。


「マリー!! シンジュ!! 今までどこに行ってたの!?」


ベッドに腰かけていた母親が部屋の中に忍び足で入ってきたマリーと真珠を見つけてまなじりをつり上げ、怒鳴った。

そう。今の時間帯は『真夜中』で、両親のどちらか、あるいは両方が部屋で寝ているということを、マリーはうっかり忘れ果てていたのだ……。


そしてマリーと真珠は母親にきっちりと叱られ、涙目になりながら寝る支度をしてベッドの上に乗り、マリーはログアウトした……。


悠里が目を開けると、見慣れた自室の天井が視界に映る。

無事にログアウトできたようだ。


「結局、怒られた……」


『エリア・インビジブル』を発動して頑張った特訓は無駄だった……。


「真珠。クレム。ごめんね……」


次に真珠に会ったらラブリーチェリーを食べさせてあげよう。

そしてスロットマシーンで楽しく遊べる椅子を見つけて買ってあげる。

クレムにはフローラ・カフェ港町アヴィラ支店で、また1000リズ分奢ろう。

そう考えながら悠里はヘッドギアを外し、ヘッドギアの電源を切る。それからゲーム機の電源を切った。


***


マリー・エドワーズのスキル経験値が上昇


エリア・インビジブル レベル1(13/100) → エリア・インビジブル レベル1(14/100)


風月8日 真夜中(6時59分)=5月20日 16:59

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