第五百五話 高橋悠里は萌花からのメッセージを確認して、明日の予定について考え、要にメッセージを送ろうとしたその時、要からメッセージが来る
「そうだ。要先輩にお礼を言わなくちゃ……!!」
大好きなカレシから初めて花をもらって浮かれている場合じゃない。
悠里は慌ててスマホを手に取り、要に直電するかメッセージを送るか迷っていると、萌花からメッセージが来た。
「篠崎先輩からのメッセージ……。なんだろう?」
悠里は一時期、バリトンサックス担当の二年生、篠崎萌花からのメッセージをブロックしていたが、今はトラブルが解決したこともありブロックを解除していた。
悠里は要にお礼の気持ちを伝えるのを優先するか、萌花からのメッセージを確認するか迷う。
……迷って、考えて、悠里は萌花からのメッセージを先に確認することにした。
「なんか、緊張する……」
悠里は深呼吸した後、萌花のメッセージを確認する。
♦
高橋ちゃん。メッセージをありがとう。
またメッセージのやり取りができるようになって嬉しい。
ここからは、サックスパートのメンバー全員に同じ内容を送信しています。
明日、予定が空いている人はパート練習しませんか?
顧問の矢上先生が「明日だったら部活をやっていい」って。
先生たちが職員室にいるから、部活をやってもいいそうです。
夏の吹奏楽コンクールは、今年は絶対に開催されると思うんだ。
だって、東京でオリンピックが開催されて世界中から選手とか関係者が日本に来るんだから、去年みたいにコンクールを中止したりはしないはず。
あたしは明日の10時に学校に行くつもりです。
お弁当を持って行って、午後からも練習しようと思ってる。
予定がある人は無理しないでね。
♦
萌花からのメッセージを読み終えた悠里は困惑した。
明日は要とのデートの予定が入っている。
「でもきっと、要先輩はアルトサックスを吹きたいよね……」
要は去年、夏の吹奏楽コンクールのステージに立ちたかったはずだ。
新型コロナが蔓延して、甲子園すら中止になって、だからきっと夏の吹奏楽コンクールも中止になってしまったのだと思う。
でも、今年はオリンピックが開催される。政府がゴリ押しでオリンピックを開催しようとしているのは、ニュース等で知っている。
だから、萌花のメッセージに書かれているように、夏の吹奏楽コンクールも開催されるだろう。
オリンピックも甲子園も、夏の吹奏楽コンクールも開催される夏になるはずだ。
要たち二年生の先輩、今年の夏で部活を引退する三年生の先輩にとっては、二年分の想いが詰まったコンクールになる。
悠里は自分がアルトサックスを吹くようになって、要が練習を積み重ねてあの美しい音色を出せるようになったことが理解できるようになった。
要は自分のアルトサックスが欲しいと思うくらいに、アルトサックスを吹くことが好きだと知っている。
明日のデートは中止して、一緒にサックスパートのパート練習に行こうと悠里から誘ってみよう。
悠里が萌花への返事を保留にして、要にメッセージを書こうとしたその時、要からのメッセージが来た。
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